「おしどり贈与」とは?ー贈与税の特例ー

不動産コラム

マンションを購入した際にその名義人を誰にするかで悩む場合があります。

例えば、資金のほとんどをご主人が住宅ローンを借入れして支払う場合はご主人名義となります。

また、自己資金を奥様名義の預貯金から支払う場合は、夫婦の共有名義とする場合もあります。

要は、出資した人が誰なのか、その出資割合に応じて持ち分をつけることが大事になります。

では、お金を出した人の分の持ち分を付けなかったらどうなるのでしょうか?

例えば先ほどの「奥様名義の預貯金から代金の一部を支払った場合」に、ご主人単独の名義としてしまうと、奥様からご主人への贈与が発生したと見なされます。

持ち分を持つということは、所有権の一部を主張出来るという意味合いがあります。当然の権利があるにも関わらず遠慮してしまうと、「譲ってあげた=贈与」となるわけです。

贈与を見なされれば、すなわち「贈与税」が発生することにもなりますので、予想外の税金を取られてしまうことになります。

長年連れ添った夫婦の特例

熟年のご夫婦がマンションを購入された時に、よく「妻にも持ち分を持たせてやりたい」というご相談があります。

実は、長年連れ添ったご夫婦の場合には贈与税の優遇があるのです。

正式には「贈与税の配偶者控除」と言いますが、通称「おしどり贈与」と呼ばれています。

詳しく内容を見てみましょう。

まず、利用するための要件として重要になるのが、婚姻期間です。

「夫婦としての婚姻期間が20年以上過ぎていること」が大前提となります。残念ながら事実婚は対象外となりますのでご注意下さい。

20年以上のご夫婦であれば、夫婦間で居住用の不動産またはその取得資金を贈与した時、最高2,000万円まで控除を受けられるのです!さらに、贈与税には110万円の基礎控除が設けられているので、これと合わせると最高2,110万円まで非課税で贈与出来てしまうのです!

例えば4,000万円のマンションを全て預貯金で購入しようとする場合。その預貯金の口座名義がご主人のものならば、マンションの名義もご主人単独となるのが通常ですが、この配偶者控除を利用して2,000万円分を奥様に贈与した場合、4,000万円分の2,000万円つまり2分の1が奥様の持ち分とすることが可能です。実際に奥様名義の口座からの出費ではなくても、夫婦2人の共有名義にすることが出来るのです。贈与税を支払うことなく、マンションの持ち分を半分持てるのです。

共働きのご夫婦の場合、それぞれがローンの借入れをするペアローンであれば自然とご夫婦共有で持ち分を持つ事になりますが、奥様が専業主婦でローンの借入れに参加しない場合などは、この制度を利用して持ち分を持つことが可能です。

もしも無税となる金額を超えて持ち分を与えることになる場合は、当然超えた金額に対しての贈与税を納めなくてはなりません。

ただし、この配偶者控除は一生に一度しか使えません。同じ配偶者の贈与について、初めてこの適用を受ける場合にしか利用できないのです。

さらに、贈与された翌年の3月15日までに居住しており、その後も住み続けると見込めることが必要です。

当然ながら、贈与税について確定申告をしなければなりません。条件を全て満たしており、贈与税の配偶者控除が使える資格があったとしても、申告手続きをしなければ対象にならないので注意が必要です。

相続税対策として効果的か?

このおしどり控除を「相続税対策」として利用しようとする場合には、果たして効果的かどうかはケースバイケースです。

というのも、夫婦間の相続であれば最低でも1億6千万円まで無税で相続出来るからです。

こちらも同様に配偶者のための軽減措置なのです。

つまり、相続時まで待てば「2,000万円と言わず1億6千万円までが無税、つまり税金がかからない」という話になります。

ただし、夫婦の財産が夫に偏っていた場合、何もせずに相続が発生すると夫の持っていた財産の総額が課税対象となってしまいます。そこに税率をかけて相続税を計算するので、前もって2,000万円分の財産を減らしておけば相続税が安くなる側面もあります。

おしどり贈与の特例を利用するべきかどうかの判断は、まず贈与をどういった目的で行うかによって変わります。

「結婚20年を記念して日頃の感謝の気持ちを伝いたい」

といった動機ならば問題ありませんが、とにかく節税を第一に!という目的の場合には、税金がどれくらいかかるのかを綿密にシミュレーションする必要があります。