「確定申告」と「年末調整」−会社員が注意する点−

不動産コラム


毎年「確定申告」の期限は3月15日までと決まっています。しかし2021年3月提出分(令和2年分)の確定申告は、新型コロナウイルスの影響により、4月15日に延長されました。

通常、会社員や公務員などは確定申告をするイメージがありません。自営業や個人事業主の人がするもの、と思っている人が多いと思います。一方で、「年末調整」という手続きがあります。会社員の人にはお馴染みの手続きですが、実は確定申告も年末調整も両方「所得税」に関する手続きであるという共通点があります。

原則的な納税方法とは

まず原則の話をすると、所得税はその年の1月1日から12月31日までの1年間に得た全ての所得を、翌年の確定申告によって税務署に申告し、納税する仕組みとなっています。納税は国民の義務の一つでもありますが、私たち納税者は自主的にこの手続きを行い、納税しなくてはなりません。日本の国税の基本は、この「申告納税制度」が採用されています。

本来は会社員の皆さんの給料も所得税の対象ですので、「確定申告が必要」となります。

年末調整とは

ところが会社員や公務員などのいわゆるサラリーマンは、通常は自分で所得税や住民税を納税することはありません。毎月支払われる給与の中から、天引きされているからです。これを「源泉徴収」と呼びます。

実は、毎月天引きされている税金は「概算金額」なのです。個人個人が加入している生命保険や地震保険などの控除は度外視されています。そこで1年の最後に「過不足を計算して税金を確定する手続き」をします。これが「年末調整」です。この年末調整を行うと、確定申告をしなくて良いという仕組みになっています。ありがたいことに、会社があなたの代わりに手続きをしてくれているのです。

つまり、年末調整とは「先払いしていた税金を精算する手続き」ということになります。

ちなみに年明けくらいに勤務先から配布される「源泉徴収票」は、この精算手続きの結果です。源泉徴収額の欄に記載されているのが、あなたが1年間で支払った所得税の金額なのです。

源泉徴収票は給与支払い者(勤務先)が発行する書類ですので公的な証明書ではありません。しかし、住宅ローンを借入する際には税込年収金額を確認する重要な書類となります。

年末調整していても確定申告した方が良い人

基本的に、年末調整をしていれば確定申告は不要です。ところが、以下の場合には会社は手続きが出来ないため確定申告が必要となります。

①医療費控除

自分や家族が病気や怪我で病院にかかった治療費、薬局で購入した薬代などの医療費が「10万円」を超えた部分を控除できる。

②住宅ローン控除の初年度

住宅ローンを利用して不動産を購入した場合、年末残高の1%を限度として税金が戻ってくる。

初年度は必ず確定申告が必要で、2年目からは年末調整で手続きをする。

③寄附金控除(ふるさと納税を含む)

赤十字や自治体など特定の団体に寄付をした場合、寄付金額から2000円を引いた金額を所得税や住民税から控除できる。

④雑損控除

災害や盗難・横領などにより損害を受けた場合に所得から控除できる。

⑤特定支出控除

仕事に関わる支出が多い場合に控除できる。

・図書購入

・衣類の購入

・交際費用

・個人負担の通勤交通費

・転勤に伴う引越し費用

・単身赴任者の帰宅費用

・研修費用

・資格費用

要件を満たせば還付申告が可能です。

年末調整していても確定申告の義務がある人

以下の場合は、年末調整+確定申告が義務となっています。

①年間の給与が2,000万円を超える人

②複数の箇所から給与を得ている人

③副業で20万円以上の所得がある人

④転職などで年末調整しなかった人

④のケースは、年の途中で転職した人の場合です。1月1日から10月末までA社、11月1日から転職してB社に勤務したとします。この場合、A社・B社の2社から源泉徴収票を受け取ります。B社で年末調整の手続きをしてくれれば問題ありませんが、年末近くになると会社では対応してくれないケースがあります。この場合、B社から受け取った源泉徴収票には「年調未済」と記載されています。この文字があると「税金が確定していない状況」なので、必ず翌年確定申告をしなければなりません。会社員=確定申告しなくていいというイメージでいると、手続きを忘れてしまいがちです。もし忘れていた場合には、5年間であれば遡って申告することが出来ますので早めに税務署へ出向きましょう。会社員の多くが、税金が還付される結果となるケースが多いと言われています。

住宅ローンの申し込みをする際に発覚することも多いので、転職者の場合は注意しましょう。