住宅ローンの借入れ期間−35年と20年どちらにすべき?

不動産コラム

住宅ローンの借入れ申込みをする時に、借入れ期間を何年にするかという問題があります。

実際に「年齢的に最長の35年も組めるけれど、20年ぐらいで終わりたい。最初から20年で借りれますか?」というご質問を受けることがよくあります。特に定年までに支払い終えたいという希望から、短い期間での借入れにしたい方がいらっしゃるのですが、果たしてそれが本当にお得なのでしょうか?今回は同じ借入れ条件で借入れ期間が違うパターンを比較してみたいと思います。

35年返済と20年返済、支払額はどう変わる?

例えば4300万円の借入れ、金利は変動金利の0.59%、元利均等返済、ボーナス払いなしとします。(金利の変動は加味しません)

35年返済では毎月の返済額は113,340円です。35年間繰り上げ返済をせずに支払った場合の総返済額は47,602,975円、利息分は4,602,975円となります。

一方、20年返済では毎月の返済額は189,989円となります。20年間繰上げ返済をせずに支払った場合の総返済額は45,597,440円、利息分は2,597,440円となります。

毎月の返済額を比較すると、実に76,649円もの差になります。期間を短くすると返済額が増えてしまうのは仕方ありませんが、借入期間が15年も違うとこんなにも差が出てくるのですね。まずはこの支払い額が現実的なものかを検証する必要があります。

繰上げ返済を併用するとどうなるか?

さて、借入れは最長の35年で申込み、繰上げ返済して早めの完済を狙う人は多いと思います。先ほどの例で繰上げ返済をして最終的に20年で完済できるようにするにはどうしたら良いでしょうか?

4300万円を同じ変動金利0.59%、35年で借入し、毎年100万円繰上げ返済を続けたとします。繰上げ返済シミュレーションをすると、なんと20年で完済という結果になるのです。

もちろん「毎年100万円」というと難しいと感じるかもしれません。しかし、20年返済の毎月返済額と35年返済の毎月返済額の差額、76,649円を年間に換算すると(×12ヶ月)919,788円です。

つまり、35年返済で借り入れをし、20年返済で返済したつもりで差額の76,649円を毎月積み立て、約100万円になったら繰り上げ返済する。これを続ければ結果的に20年で完済できるということになるのです。

出来るだけ長期間で借入れするメリット

借入期間が短いと返済額が高くなることは先程説明しました。返済額が高額になると、それだけ審査も厳しくなってしまいます。同じ年収でも返済期間が短くなれば借入出来る金額が変わってきます。銀行には審査金利というものがあり、実際に返済する時の適用金利よりも高い金利が存在しています。大体3.1%~4%くらいだと言われる審査金利ですが、今回は3.5%と仮定して計算してみましょう。

税込年収が600万円の場合、35年返済では4,234万円が借入可能額となり希望の4300万円に近づきます。一方、20年返済では3,017万円となり、実に1200万円も減額されてしまいます。

年収が850万円であれば、35年返済では5,998万円、20年返済では4,274万円が借入可能となります。20年返済で借り入れしようとすると、年収が250万円アップする必要があります。

不測の事態に備えられるかどうか

住宅ローンは人生最大の借り入れとも言われます。多額で長期間に及ぶので、とにかく「無理のない返済」で「きちんと完済できる」ことが重要になってきます。

長い人生の間には様々なリスクが想定されます。

勤務先の業績が悪化するかもしれません。自身が病気や怪我で働けない状況になるかもしれません。この度の新型コロナウイルスの流行も、その一つと言えます。将来どんな事態が起こるかは誰にも分からないのです。

支払額を最大限にしていると、こうしたリスクに対応できなくなる可能性が高くなります。住宅ローンの返済額は、貯蓄も並行して出来る金額に抑えるのが一番のポイントです。いくら低金利時代だからと言っても、変動金利であれば上昇リスクも想定しなくてはいけません。

返済期間は無理をしない

最初から返済期間を短縮して借り入れすると、不測の事態が起こった場合に返済が滞ってしまう可能性があります。年齢的に可能なのであれば35年で借り入れし、繰上げ返済を計画的に行って期間短縮する方が現実的です。繰上げ返済シミュレーションも沢山ネットにアップされています。借入可能な金額や、支払額ばかりでなく、繰上げ返済についても同時にシミュレーションすると計画的な返済が出来ます。