同性パートナーで収入合算やペアローンは利用可能?

不動産コラム

住宅ローンの借り方の一つとして、収入合算やペアローンという方法があります。メリットとしては、より大きな金額の借り入れが可能となるため、物件選びの選択肢が広がるという点が挙げられます。収入合算やペアローンが利用できる人は、主に配偶者、父母、子供などとされているのが一般的ですが、入籍前の婚約者でも可能としている金融機関も多くあります。さらに近年ではLGBTsへの理解も深まり、同性パートナー同志で住宅ローンを借りる場面も増えてきました。金融機関側もこうした時代の変化に対応し、同性パートナーで利用できる住宅ローンの提供を始めています。

同性パートナーが利用できる金融機関

現在、一部のメガバンク、信託銀行、ネット銀行、全国の地方銀行、労働金庫、信用金庫などで同性パートナー向けの住宅ローン商品が出ています。

例えば、いち早く同性パートナーでの取り扱いを始めたみずほ銀行では、「収入合算」と「家族ペア返済」(いわゆるペアローンと同義)の2つのパターンを用意しています。夫婦と同等の取り扱いなので、金利や手数料も通常商品と変わらず利用できます。

さらにフラット35でも2023年1月4日(水)以後の借入申込受付分から、同性パートナーの方との連帯債務でお申込み、収入合算者、融資物件共有者としての追加が出来るようになりました。

申込みに必要な書類

現状、同性パートナーとの婚姻が認められていないため、申し込み時には関係性を証明する書類が必要になります。

①地方公共団体が発行する「パートナーシップ証明書」、「宣誓書受領書」またはこれに準ずる証明書

「パートナーシップ証明書」とは、法律上の婚姻とは異なるものとして、男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備えた戸籍上の性別が同じ二者間の社会生活における関係を「パートナーシップ」と定義し、一定の条件を満たした場合にパートナーの関係であることを証明するものです。法的な拘束力はありませんが、病院で家族として扱ってもらえる、生命保険の受取人に指定できる、携帯電話の家族割サービスの対象となる、などのメリットがあります。

②「同性パートナーに関する合意契約に係る公正証書」の正本または謄本

同性カップルが婚姻関係に準じた関係を作るための契約書、簡単に言うとこれからの二人の共同生活についての約束事を書面にしたものです。約束事(契約内容)は、二人で自由に決めることが出来ます。例えば、「権利関係に関すること」「財産関係に関すること」「相続に関すること」「子供に関すること」「医療行為に関する意思表示」「パートナーシップを解除する場合」などが盛り込まれます。

ただしこの契約によって損害の賠償を求めたり、第3者に契約の効果を強制する効力はありません。

③「任意後見契約に係る公正証書」の正本または謄本

 「任意後見契約」とは、「将来認知症などで自分の判断能力が低下した場合は、パートナーに日常的な手続きや財産管理を行ってもらいます。」とあらかじめ、お願いすることができる契約です。この契約は必ず「公正証書」にしなければならないと法律で定められています。

ここに出てくる「公正証書」とは、これらの契約書を公文書にしたものです。そのためには全国にある公証役場で、公証人に公文書にしてもらう必要があります。公証役場にお墨付きをもらうということで、合意契約により強く法的な意味を持たせることが出来るのです。

さらに任後見契約は不動産と同じように法務局に登記されます。つまり、登記が完了すれば「登記事項証明書」を取得することが可能になります。

このように、必要書類を準備するには時間と費用がかかるので、計画的に準備していくことが大切です。また金融機関によって求める書類の種類も違いますので、事前に確認しましょう。

万が一のトラブルも知っておこう

同性パートナーに限ったことではありませんが、支払いの途中で関係が破綻・解消となるケースもあり得ます。住み続けないのにローンの支払いだけが残る、もしくはその物件の売却代金がローンを下回れば補填する費用が必要となる・・・など、万が一の時のことも考えておく必要があります。

また同性パートナーには婚姻関係が認められていない以上、相続が発生したときにトラブルとなるケースが多いようです。前述の「任意後見契約」はあくまで生きている間のことしか定めていません。重要なのは、一方が亡くなった後のことです。住宅ローンには生命保険が付いているので、ローンの返済についてはあまり心配がないかもしれません。しかし、相続となると二人はお互いの法定相続人になることはできません。したがって、ペアローンでは相互に、収入合算では名義人から非名義人へ、「所有権(持分)を遺贈する遺言」が必要になります。

また遺言をきちんと準備していても、残念ながら相続税に関する優遇制度は法定相続人にしか適用されません。場合によっては相続税が課税される可能性があることを覚えておきましょう。

同性パートナーでの住宅ローン申し込みが可能な時代になりましたが、メリット・デメリットをしっかり理解して利用しましょう。