マンションの「耐震」「免震」「制震」どれが効果的？

地震大国と言われる日本では、建物の耐震性が非常に重要視されます。マンションの構造では「耐震」「免震」「制震」の3種類があり、今回は特にタワーマンションで採用されている「免震」構造について解説します。耐震や制震との違い、メリットデメリットについて詳しく見てみましょう。

マンションの基本構造は「耐震」
「免震」構造の特徴と仕組み
「制震」では不十分？
最新の構造が開発されている

マンションの基本構造は「耐震」

まず「耐震」構造とは、柱や梁など建物自体の強靭さで地震の揺れに抵抗する構造を指します。マンションのような集合住宅では、鉄筋コンクリート造にすることで建物全体を強固にし、地震による崩壊を防いでいます。

中でも「新耐震基準」と呼ばれているのが、1981年6月1日に施行された建築基準法における耐震基準です。震度6強から7程度の地震でも建物が倒壊しないことを目標としており、旧耐震基準と比較して大幅に耐震性能が向上しています。阪神淡路大震災の時に、新耐震基準で建築されたマンションは被害が少なく一定の評価を得ました。しかし地震による揺れが直接伝わるため、家具の転倒や棚の物が落下するリスクが高いというデメリットがあります。また建物に地震のエネルギーがダイレクトに伝わってしまうため、壁や柱が大きく壊れたり、ひびが入ったりなど建物の損傷が大きくなってしまいます。

「免震」構造の特徴と仕組み

「免震」構造は、建物と基礎の間に免震装置（アイソレータとダンパー）を設置することで地震の揺れを建物に伝わりにくくしています。アイソレータは主に積層ゴムを使用しており、地震の揺れを吸収します。ダンパーはアイソレータが吸収したエネルギーをさらに吸収し、揺れを抑える役割を担います。オイルダンパーや鉛ダンパーなど、様々な種類があります。また、地層と建物を切り離して建築してあるため揺れそのものが伝わりにくい工法になっています。揺れを大幅に抑え、家具の転倒や内部の被害を防ぐことが「免震」構造のメリットです。

「耐震」構造が文字通り地震の揺れに耐えるのに対し、「免震」構造は揺れを吸収して建物自体の揺れを抑える仕組みです。タワーマンションなどの超高層建造物を耐震構造で建築すると、地震が起きた際に途中で折れてしまうような崩れ方をしてしまい限界があります。免震構造が出現したことで超高層マンションが建築可能になったとも言えます。ただ、導入コストが高くなること、メンテナンスが必要なことなどがデメリットとして挙げられます。また、横揺れにはとても効果を発揮するのですが、縦揺れに対しては弱いため「直下型地震」では免震だけでは十分に機能しないことに留意しましょう。

余談ですが、京都の三十三間堂は免震構造の建物なのをご存知でしょうか。砂の層と粘土の層を幾重にも重ね、その上に建物を建てる「版築（はんちく）」とよばれる構造が導入されているそうなのですが、これが正に免震構造の考え方によるものなのです。ゴムなどの素材がない１２～１３世紀の時代に、免震構造の先駆けともいえる独自の技術が存在していたことは非常に驚きです。

「制震」では不十分？

「免震」とよく比較されるのが「制震」構造です。「制震」では建物内部に制振装置を設置し、地震の揺れは直接建物に伝わるものの、揺れを吸収・軽減して建物へのダメージを軽減します。一般的には内壁と外壁の間に制震ダンパーを設置して揺れを吸収します。制震ダンパーは自動車のサスペンションと同じ効果を発揮し、ゴムダンパー、オイルダンパー、金属ダンパーなどの種類があります。「免震」に比べて導入コストが安く、メンテナンスも比較的容易なのがメリットですが、地震の揺れを抑える効果は「免震」よりも劣ります。

「免震」と「制震」を比較すると、「免震」の方が地震の揺れに対して効果を発揮すると言えます。しかし、高層建物は台風などの強風でも揺れてしまう特性があります。実は強風に足しては「免震」よりも「制震」構造の方が効力を発揮します。