ネット銀行の金利上昇で魅力が減少?メガバンクとの差異と今後の戦略を考察

不動産コラム

かつて「住宅ローン=ネット銀行が安い」というのは、ほぼ常識でした。ネット銀行は、店舗を持たないことで運営コストを削減し、その分を顧客還元に回すというモデルで成長し住宅ローン業界でのシェアを広げてきました。しかし、 2024年以降のマイナス金利政策解除により、その構図が大きく揺らぎます。最近は「ネット銀行の金利が上がって魅力がなくなった」と感じている人も多いのではないでしょうか。

今後の住宅ローン選びはどう変わるのか、 そして、ネット銀行はこの逆風の中でどんな戦略を描いているのかを探っていきます。

なぜネット銀行の金利が上がったのか? 背景にある「資金調達力」の差

インターネット銀行の変動金利が上昇した背景には、まず資金調達の構造的な違いがあります。

インターネット銀行:市場から資金を調達するため、金融市場の金利上昇の影響を受けやすい

メガバンク:預金を原資とするため、調達コストが安定しており、金利上昇の影響を受けにくい

特に2025年6月末で日銀の「貸出増加支援制度」が終了したことで、金融機関の貸出スタンスや金利戦略に影響が出ました。

メガバンクは多様な資金源を持っているため、制度終了後も比較的スムーズに移行できました。一方、ネット銀行は資金調達手段が限られるため、金利引き上げや融資基準の厳格化を早めに実施せざるを得ない状況となりました。特に住宅ローン商品に関しての対応は、次のように差がありました。

メガバンクは「基準金利は据え置き+優遇幅を縮小」の形で実質的な金利引き上げを緩やかに実施。優良顧客には引き続き低金利を提供。

ネット銀行は、変動・固定金利のいずれも早い段階で引き上げを実施。特に借り換え需要への対応に慎重になり、新規貸出を選別する傾向が強まりました。

金利だけで選ばない!これからの住宅ローン選びの視点

低金利が住宅ローン選びの重要な要素であることは間違いありません。ただし、今後は「金利だけで選ぶ」ことがリスクになる可能性もあります。

1.金利の変動リスクをどう認識するか

低金利での変動金利は魅力的ですが、今後さらに基準金利が上昇する可能性もあります。金利が増えるリスクを許容できるか、固定金利や固定期間選択型も含めて検討する必要があります。変動金利と固定金利のミックス借入も再び注目されているようです。

2.審査スピードと柔軟性

一方、メガバンクは対面での相談が可能で、柔軟な対応が期待できます。建売や中古物件など、スピードが求められる場面ではメガバンクが有利です。

3.団信(団体信用生命保険)の内容

インターネット銀行はがん団信や三大疾病保障などが標準装備されていることが多く、安心面では優位なケースもあります。

4.手数料及び諸費用

インターネット銀行は事務手数料が定額制のプランもあり、初期費用を抑えられる場合があります。

インターネット銀行の今後の戦略は?

金利競争で劣勢となったネット銀行は、金利以外の付加価値での顧客獲得を目指す戦略に移行しています。

① 預金連動型の還元サービス

auじぶん銀行は、住宅ローン契約者が普通預金に資金を預けることで、利息の一部を現金で還元するサービスを開始しています。

②借入期間の柔軟化

楽天銀行やPayPay銀行は、借入期間を最大50年まで延長できるプランを導入しています。月々の返済額を抑えたい若年層のニーズに応えています。

③ペアローンの安心強化

夫婦で契約するペアローンに関して、配偶者が死亡した際の保障内容を考慮するなど、団信を充実させています。

④デジタル視聴型の利便性

インターネット銀行の強みである「オンライン視聴」「スマホで手続き」「 AI審査」などの利便性は、今後も差別化要素として活用されることになるでしょう。

まとめ:住宅ローン選びは「総合力」で判断する時代へ

住宅ローンは、金利だけで決めるのではなく、審査のスピード、保障内容、手数料、サービスの柔軟性など、複数の要素を総合的に見て選ぶ時代に突入しています。

若い共働世帯にとってはローンの「安さ」だけではなく、「手間の少なさ」や「安心感」がより重要になっています。 育児・仕事・将来設計が複雑に絡み合う中で、今だけでなく未来の変化にも寄り添ってくれる住宅ローンを選ぶ視点が求められます。

これから住宅ローンを検討する方は、「自分にとって一番大事か」を明確にし、複数の銀行を比較しながら、納得のいく選択をしていきましょう。