住み替えした人は要チェック!「3,000万円控除」と「住宅ローン控除」は併用できない⁈

不動産コラム

自宅を売却して住み替えた人が利用できる税制優遇はいくつかありますが、その中でも大きいのがいわゆる「3,000万円控除」そして「住宅ローン控除」です。ただしこ2つの制度は残念ながら併用することが出来ず、どちらか一方を選択しなくてはなりません。そうなると「どちらが得なのか?」が問題となります。

今回は「3,000万円控除」と「住宅ローン控除」の概要を整理し、どちらがお得かを検証してみましょう。

比較するポイントを整理

まずは2つの制度の何を比べるかを明確にする必要があります。比較ポイントは次の通りです。

【3,000万円控除】(正式には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」)

対象となる住居:旧居(これまで住んでいた持ち家)

主な適用条件:旧居の売却で「譲渡所得」が発生している(利益が生まれた)

優遇の効果:課税される税金を減らせる

【住宅ローン控除】(正式には「住宅借入金等特別控除」)

対象となる住居:新居(住み替え先の持ち家)

主な適用条件:住宅ローンを借り入れして新居を購入している

優遇の効果:還付金を増やせる

どちらを選択するかは、譲渡所得に対してかかる税金と住宅ローン控除額のどちらが大きいかで判断することになります。

つまり、「住宅ローン控除額 > 譲渡所得でかかる税金」の場合は住宅ローン控除を利用し

「住宅ローン控除額 < 譲渡所得でかかる税金」の場合は3,000万円控除を利用するとメリットが大きくなります。

中古マンションへ住み替えた場合をシミュレーション

マイホームを売却した場合の3,000万円控除は、マイホームを売却した場合の譲渡所得(売却価格-取得費-譲渡費用)から最大3,000万円を控除できるという制度です。譲渡所得が3,000万円を下回れば税金は0円となるので、非常に大きな節税効果があります。

では実際にどちらを選択した方がよいかをシミュレーションしてみましょう。

【例①】3,200万円で購入したマイホームを8年後に3,500万円で売却 取得費115万円

譲渡所得=3,500万円-3,200万円-115万円=185万円

譲渡所得185万円に対してかかる税金は

所得税(15.315%)28.3万円+住民税(5%)9.3万円=37.6万円 となります。

新居は中古マンションを3,000万円で購入し、住宅ローンを2,000万円借り入れしたとします。

今回は全期間固定金利のフラット35で金利1.4% 借入期間30年 年収600万円として計算します。

住宅ローン控除期間は10年で計算すると、控除額合計は約118.3万円となりました。

先ほどの37.6万円と比べると控除額が大きくなったので、このケースでは住宅ローン控除を選択した方が良いという結果になります。

【例②】1,500万円で購入したマイホームを6年後4,500万円で売却 取得費150万円

譲渡所得=4,500万円-1,500万円-150万円=2,850万円

譲渡所得2,850万円に対してかかる税金は

所得税(15.315%)436.5万円+住民税(5%)142.5万円=579.0万円 となります。

住宅ローン控除は例①と同等とすると、今度は譲渡所得に対する税金の方がはるかに上回っています。このケースでは譲渡所得が2,850万円という計算だったので、3,000万円の控除を利用すると課税金額が0円、つまり本来なら課税されるはずだった579万円もの税金が0円になったわけです。住宅ローン控除が利用できずとも、差額の461万円が節税ができたことになります。

2つの制度の要件を再確認しよう

「3,000万円控除」も「住宅ローン控除」も、それぞれ利用できる要件があります。1つでも欠けていると対象外となってしまいますので、事前にチェックしておく必要があります。主なポイントは次のようになります。

【3,000万円控除】

・本人の居住用住宅であること(所有期間は問わず)

・売却先が配偶者、親、子などの親族や同族会社でないこと

・前年又は前々年に、3,000万円特別控除又は居住用の買換等の特例を受けていないこと(3年に1回適用可)

・3,000万円控除を利用するために入居した家屋でないこと

など

【住宅ローン控除】

・10年以上の償還期間がある借入であること

・床面積(登記面積)が50㎡以上あること(新築の場合、2023年までに建築確認:40m2(所得要件:1000万円))

・その年の合計所得金額が2,000万円以下であること

など

中古(既存)住宅の築年数要件(耐火住宅25年以内、非耐火住宅20年以内)については、新耐震基準適合住宅(昭和57年以降に建築された住宅」に緩和されたため利用しやすくなりました。

住宅ローン控除は今後、入居年度によって徐々に縮小傾向にあります。一方でカーボンニュートラルの実現のため、その住宅が省エネ基準をどの程度満たしているかで差をつける制度に変化しています。住み替え先の住宅がどのカテゴリーになるか(長期優良住宅・低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅、その他の住宅)で控除額が変わってくるので注意しましょう。

税制については細かい要件などがあるため、迷ったときは税務署や税理士などの専門家に相談・確認しましょう。