「災害に強いマンション」を考える-物件を選ぶポイントと日常生活の備え-

不動産コラム

地震大国と呼ばれる日本に住む私たちは、常日頃から防災を意識した生活をしなければなりません。また、近年はゲリラ豪雨や大型台風の襲来による水害も多くなっています。誰しもが住宅に関する災害トラブルは避けたいと願う中、今回は「災害に強い住まい」について考えてみたいと思います。とりわけマンションは戸建てよりも地震や台風に強い建物だと言われていますが、その理由や特徴について解説していきます。

構造そのものが圧倒的に強い

マンションは戸建てと違い、ほとんどが3階以上の高層建物です。そして戸建てが木造中心であるのに対し、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造が主流です。基礎部分は地盤の固さによりますが、ほとんどが地中の「支持層」まで杭を打ち込み、マンションの荷重を支えています。この支持層が地上から近ければ、より杭が短くなります。支持層がどのあたりの位置にあるのか気になる場合は、設計図書などを見せてもらいましょう。

これまでは地震の揺れに対して鉄筋やコンクリートといった強固な建材で、建物が倒壊や損壊しないよう耐えていました。建物の構造体で地震に耐えるのが「耐震建物」です。

一方でマンションはどんどん高層化していき、現在ではタワーマンションがたくさん建ち並ぶ時代になりました。タワーマンションのような超高層建物を「耐震構造」で建築すると、地震が起こった際には途中でポキッと折れてしまうような崩れ方をします。構造体の強さだけでは限界があるのです。そこで地震の揺れに耐える方法ではなく、地震力が伝わらないようにする「免震構造」、地震力を吸収することで建物を守る「制震構造」が開発されていきました。

「旧耐震基準」と「新耐震基準」

マンションの建築方法が進化した背景には、耐震基準の改正があります。いわゆる「旧耐震基準」と呼ばれる1981年5月31日までに確認申請を受けた建物は、震度5程度の中規模の地震で大きな損傷を受けないことが基準となっていました。一方、1981年6月1日以降の確認申請を受けた建物は「新耐震基準」と呼ばれ、震度6~7の大規模地震に対して倒壊しないという内容が加わりました。これにより住宅の最低限の強度が引き上げられ、より耐震性能が厳しくなったのです。1981年が一つの分岐点となっているのは、1978年の宮城県沖地震を受けて改正が行われたことが背景にあります。実際、1995年の阪神・淡路大震災では新耐震の基準を満たした建物の損傷は少なかったと報告されています。中古マンションを探す際には、どちらの耐震基準で建築された建物かを確認するようにしましょう。

二次被害を防ぐ「耐震ドア」

マンションの建物そのものが倒壊しなくても、玄関ドアが破損すると開かなくなる場合があります。これは地震によってドア枠が歪むと、その重みで丁番も歪み、扉が開閉できなくなるという現象です。玄関ドアは貴重な避難経路の一つです。部屋に閉じ込められて避難できなくなると、思わぬ二次被害を引き起こす可能性もあります。

こうした被害を避けるため、多くの分譲マンションでは「耐震ドア」が採用されています。「耐震ドア」はドア枠と扉の間にあらかじめ歪みを想定した隙間がつくられている構造となっています。隙間があると言っても、目立つような大きな隙間や防犯上重大な問題があるわけではないので安心してください。

防災に対する意識

マンションは集合住宅がゆえに管理組合が存在します。管理組合では「防災マニュアル」を策定し、地震発生から発生からの経過時間に応じてどう動くべきかといった対応を事前に想定しています。非常時には、誰が、何を、どのように動くのか具体的にシミュレーションしておかなければ、いざという時に機能しません。入居者の安否確認を正確に行うためにも、日ごろから入居者名簿を最新の状態にしておくことも必要です。

そして最も重要なのは「防災訓練」です。定期的に開催している管理組合も多いと思いますが、単に館内放送でロビーに集合するだけでは意味がありません。最近では防災備蓄倉庫を備えている物件が増えていますが、実際にマンホールトイレなどを設置する訓練を行う管理組合もあるようです。いざという時に知識はあって体が動かないことが多くあります。日頃から体験しておくことが重要ですが、これは大人だけでなく子供にも言えることです。防災訓練が行われる際には、家族で参加することをおすすめします。

防災意識が高い管理組合にするには、管理会社がどれだけノウハウをもっているかも重要です。物件選びの際には管理会社も確認しましょう。

日常の備蓄が大切

マンションは建物が倒壊しない可能性が高いため、被災時には「自宅避難」することになります。その際に重要になるのが「自助」です。自分の身は自分で守る、数日間の飲料水や食料を日ごろから備蓄しておきましょう。

できれば発災後3日間乗り切る人数分の備蓄(※可能であれば7日分の備蓄)が必要とされています。

・水(1人分の目安:3リットル/1日当たり)

・食料(1人分の目安:3食/1日当たり)

・災害用トイレ(1人分の目安:5回/1日当たり)

その他日用品や常備薬の備蓄、防災セットの準備

今一度自宅の備蓄を見直し、家族でいざという時の連絡方法を決めておきましょう。

また、今すぐできる防災方法として、家具の転倒防止があります。タンスや食器棚など、背の高い家具にはできる限り対策をしておきましょう。