住宅ローンの借入限度額は「年収の7倍まで」その数字信じて大丈夫ですか?

不動産コラム

住宅ローンのご相談を受けていると、「年収の何倍まで借入可能ですか?」「年収の7倍まで借りられると聞いたのですが・・・」といったご質問を受けることがあります。キーワードは「年収の〇倍」。確かに一般的には年収の約7倍までが借入れ限度額だとも言われています。今回は、住宅ローンは年収の何倍までが妥当なのか、また「年収の〇倍」という決め方に潜む危険についてお話します。

「年収の7倍まで」が目安

住宅ローンにおける各銀行の審査基準はさまざまな要素がありますが、「年収倍率」もその一つの項目です。あなたが購入しようとしているマイホームの予定価格が、年収の何倍かという計算になるわけです。

一般的に「年収の約7倍までが借入限度額」としている銀行は多々あります。例えば年収600万円の人であれば4200万円、年収1000万円の人であれば7000万円が借入限度額の目安となります。

明確に「年収の7倍以内まで」という基準がある銀行であれば、それ以上の金額を申し込んだ場合は7倍の金額に減額して承認されることになるでしょう。

中には「年収の8倍まで」というさらに緩やかな基準にしている銀行も実在しています。もちろん申し込んではいけないわけではありませんが、慎重に検討しなくてはならないポイントがあります。それは「借りられる金額と返せる金額は違う」ということです。

「返済負担率」の壁

実は住宅ローンの審査においては、「年収倍率」よりも「返済負担率」が重視されます。ざっくりと年収の7倍の金額をイメージしていても、実際にその返済金額を最終回まで支払っていけるのか?というのが課題となるのです。

例えば、年収1000万円の人が7倍の金額7000万円を借入した場合。35年返済、金利0.425%、ボーナス払いなしで計算してみると、毎月の返済金額は179,399円です。

返済負担率とは、住宅ローンの年間返済額が年収に対してどのくらいの割合になるかを計算した数字です。

このケースでは、179,399円×12=2,152,788円が年間返済金額です。これを年収1000万円で割ると21.5%、これが返済負担率となります。

フィナンシャルプランナー的な観点からすると、返済負担率は20%~25%以下が理想と言われています。この範囲に収めると、余裕を持って生活できるといわれている数字です。その場合21.5%という数字はとても優秀だと感じますよね。しかし実際には税込み年収ではなく、手取り年収で生活するわけですから計算し直す必要があります。

税込み年収1000万円の人の手取り年収は約730万円ですので、返済負担率を再計算してみると29.4%になります。先ほどの21.5%から大きく跳ね上がりました。

さらに年収の7倍を「手取り年収」で計算してみると、5110万円が限度額となります。税込み年収の7倍である7000万円と比較すると、2000万円近くの差が生まれることになります。これこそが「借りられる金額と返せる金額の違い」なのです。

借入限度額は人それぞれ

借入限度額を考える時には、年収だけでなく「家族構成」「借入時年齢」「その他の借り入れの有無」なども考慮しなくてはなりません。同じ世帯年収でも、夫婦二人だけの家庭と子どもが2~3人いる家庭では、生活費や将来必要となる教育費が全く違います。

またマイホームを購入する年齢つまり住宅ローンがスタートする年齢が何歳か?でも差があります。年代別で審査に通りやすり年収倍率は

30代・・・7倍

40代・・・7倍

50代・・・6倍

となりますが、余裕のある返済を目安にすると

30代・・・5倍

40代・・・4.5倍

50代・・・4倍

と高齢になるにつれ下がります。

サラリーマンであれば、定年まであと何年残っているかが非常にキーポイントになります。

50代で定年まであと少しの人が年収の7倍を借入してしまうと、定年後にも同じ金額を返済し続けられるかどうかは疑問です。銀行もこの部分を非常に慎重に審査しますので、上記の倍率をぜひ念頭に置いておいてください。

マンションではさらに注意が必要

購入するマイホームがマンションの場合は、さらに考慮しなくてはいけないものがあります。それは毎月の管理費・修繕積立金の支出です。戸建てと違ってマンションでは毎月ランニングコストがかかります。住宅ローンの返済に管理費・修繕積立金、駐車場利用料などの経費をプラスして返済負担率を考える必要があります。

「年収の7倍」はあくまで目安です。一般的な借りられる金額ではなく、トータルの支払い金額から無理のない借入れ金額を逆算し、購入するマイホームの予算を決めるようにしましょう。