マイホーム購入を考え始めたとき、多くの方が直面するのが「住宅ローン」と「団体信用生命保険(以下、団信)」です。
団信とは、住宅ローンの契約者が万一亡くなったり、高度障害状態になった場合に、残りのローン残高が保険金で完済される仕組みです。多くの金融機関では、住宅ローンを組む際の必須条件となっています。
ここで、あまり知られていない、しかし非常に重要な現実があります。心療内科やメンタルクリニックへの通院歴があると、団信に加入できなくなる恐れがあるという点です。
健康のための行動が、不利に働くことがある
ストレス社会の現代において、心の不調を感じた際に専門機関を受診することは、決して特別なことではありません。むしろ「早めに相談する」「無理をしない」という、健康的で賢明な判断です。
しかし団信は生命保険の一種であるため、加入時には健康状態の告知が求められます。その中で、精神科・心療内科への通院歴があると、症状が軽く現在は安定していても、保険会社がリスクを高く評価するケースがあります。
結果として、
・団信の審査が通らない
・条件付き加入になる
・そもそも住宅ローン自体が組めない
といった事態に直面することもあります。
「通院歴がある=住宅購入不可」ではない
重要なのは、通院歴があるからといって、必ず住宅ローンが組めないわけではないということです。実際には診断名、治療内容、完治からの期間、現在の投薬状況などを総合的に見て判断されます。
ただし、何も知らずに話を進めてしまうと、後になって選択肢が一気に狭まることがあります。だからこそ、「団信に入れない場合の対応策」を知っておくことが大切です。
団信に入れない場合の主な対応策
団信の審査に通らなかった場合、多くの方は「もう住宅購入は無理なのでは」と感じてしまいます。しかし実際には、状況に応じて検討できる選択肢はいくつか存在します。
大切なのは、「ダメだった」で終わらせず、別のルートを知っておくことです。
① ワイド団信を検討する
一般的な団信よりも、健康条件を緩和した「ワイド団信」を用意している金融機関があります。
持病や通院歴がある方向けの商品で、加入できる可能性が広がる一方、金利が上乗せされる点には注意が必要です。毎月の返済額は増えますが、「団信に入れない=住宅ローン不可」と即断する前に、一度は検討したい選択肢です。
② 団信加入が任意の住宅ローンを選ぶ
代表的なのが「フラット35」です。フラット35では団信加入が任意のため、団信に加入できなくても住宅ローンを利用できます。ただしその場合、万一の際にローン残高が残るリスクは家族に引き継がれるため、別途、生命保険などで備える必要があります。
「団信に入らない」という選択は、無防備であることと同義ではありません。備えの形を変えるという発想が重要になります。
③ 民間の生命保険で代替する
団信の代わりに、民間の生命保険で住宅ローン残高をカバーするという考え方もあります。団信よりも告知内容が柔軟な場合もあり、条件次第では加入できるケースもあります。
ただし、保障額や保障期間の設計には専門的な知識が必要になるため、保険に詳しい担当者と相談しながら進めることが望ましいでしょう。
④ 告知期間が過ぎるのを待ち、改めて申し込む
あまり知られていませんが、団信の告知には「過去○年以内の通院歴」という期間が設定されています。この告知期間を過ぎることで、告知義務がなくなり、再度団信に申し込めるケースもあります。
たとえば、
・一定期間、通院や投薬がない状態が続いている
・医師から治療終了・安定と判断されている
といった場合、時間を置くことで審査結果が変わる可能性も否定できません。
もちろん、すべてのケースで有効とは限りませんし、「いつなら確実に通る」と断言できるものでもありません。それでも、「今は難しくても、将来的に可能性がある」という選択肢を知っているだけで、住宅購入の計画そのものを見直す余地が生まれます。
⑤ 早い段階で金融機関・不動産会社に相談する
最も重要なのは、物件を決めてから慌てるのではなく、住宅購入を考え始めた段階で、団信やローン条件に詳しい専門家に相談することです。事前に状況を整理しておけば、「どの金融機関が合いそうか」「今すぐ動くべきか、少し待つべきか」「どんな備えをしておくべきか」といった判断がしやすくなります。
制度を知ることが、人生設計を守る
心の健康を守るために通院することは、決して間違いではありません。それでも現行の住宅ローン制度では、その行動が思わぬ形で影響することがあります。
この事実を「知らなかった」まま進むのと、「知ったうえで選択する」のとでは、結果は大きく変わります。住宅購入は、勢いだけで決めるものではありません。 情報を集め、自分に合ったタイミングと方法を選ぶことが、後悔しないための近道です

