「長期修繕計画」とは–資産価値を守るためのマンション管理

不動産コラム

家は、戸建てでもマンションでも、建てた後の維持管理が必要になります。戸建ての場合は個人の所有物なので、問題が起こった時に対処すれば良いかもしれませんが、マンションは共同住宅です。入居者全員で建物全体的の資産価値を保たなればなりません。かつ、問題が起こったらではなく、計画的である必要があります。マンションでは、新築された時から概ね30年にわたり「長期修繕計画」が作成され、これに基づいて維持管理、修繕を行っています。

今回は、長期修繕計画の中身やチェックポイントをお話しします。

「長期修繕計画」の中身

新築マンションであれば、契約時に売主から「長期修繕計画」の冊子を渡されるケースがほとんどです。

その中身は大まかに

①建築工事計画

  大規模修繕工事や建具関係の修繕計画が記されています。

②設備工事計画

  給排水設備やエレベーターの更新等が記されています。

③資金計画

  棒グラフなどで示されています。

という3つの柱で構成されています。

マンションごとに規模や立地条件も違うため、決して全国一律ではなく、そのマンションに合った計画を立てる事が必要となります。

一般的な中低層マンションであれば、修繕項目としては次のような内容になります。

①10年目(毎)で、鉄分(玄関扉、バルコニーなど)塗装と外壁(目地シーリング含む)の補修

②15年目(毎)で、一部設備機器の取替えと配管大掃除

③20年目(毎)で、屋上防水の補修かやり直し

④30年目(毎)で、エレベーター・駐車機械の取り替え

⑤50年目(毎)で、建物建替

さらにこれらに加え、予想外のアクシデント(台風、地震、火事など)に対応する費用も必要となります。

チェックするポイント

長期修繕計画は一覧表やグラフで構成されていますので、この中で特にチェックしておくべき箇所をご紹介します。

まずは、多額の費用が発生する箇所です。

建築工事では各項目にずらっと縦に数字が入っている所になります。

おそらく「12年目」に相当するケースがほとんどですが、いわゆる「大規模修繕」が行われる節目の年になります。各項目の数字ではなく、総額でいくら必要になるのか、表の一番下の数字を確認しましょう。

設備工事ではエレベーターや給排水設備の更新時期と金額を見ましょう。概ね30年目以降に記されているケースが多いのですが、大規模修繕並みに多額の費用がかかるので確認しておきましょう。

最後に資金計画ですが、中身は

① 現在までに積み立てられている金額

② 現在の修繕積立金戸当たり月額

③ 現在の修繕積立金額での収入月額

④ 借入金等による収入

⑤ 上記建築及び設備工事の合計費用

などが記されています。

中古マンションではある程度年数が経過してしているので、その時点までで積み立てられている金額は必ずチェックするべき項目です。

また、大きな工事の後で積立金残高に「マイナス」が発生していないかが非常に重要になります。もしもマイナスが計上されている場合には、対策が必要となります。

修繕積立金は増額するものと考えよう

先程の「マイナス」が発生した場合の対策とは、具体的にどんなものが考えられるでしょうか。

まずは一時金の徴収です。足りない分を一気に集金しようというもので、共有持分に応じて算出されることになります。物件の規模にもよりますが、数万円~数十万円とかなり負担が生じる事が予想されます。

次に、修繕積立金の値上げです。不足した場合はもちろんですが、当初から段階的に積立金の値上げを織り込んだ計画になっている場合もあります。概ね、5年ごとに値上げされるケースが多いようです。

そして最後は、管理組合で借入れをする、です。不足している金額を借入れるとなると、返済しなくてはなりませんのでその分の負担が各住戸に振り分けられます。

こうしたお金に関する変更は管理組合の決議にかけられ、入居者の総意で決定します。

計画は逐次見直されるべき

無計画に管理を行った結果、修繕が必要になった時に必要な金額が積み立ておれておらず、建物の老朽が進んでしまう。マンションの資産価値が暴落するのを防ぐために、長期修繕計画が生まれました。

しかし、これはあくまで当初の予想にすぎません。20~30年前と現在とでは、気象条件なども変化しています。その修繕工事が、その時期に必要であるかを的確に診断する必要があります。そのため、長期修繕計画は数年ごとに見直しをするべきものなのです。

マンションの管理費や修繕積立金は、ランニングコストとして必要不可欠な経費です。あまりにも安すぎる設定だと家計にはありがたい事ですが、マンション全体の資産価値を考えた場合には手放しで喜べるものではありません。

長期修繕計画の内容をしっかりと理解し、あなたの資産の将来をしっかりと守ってください。