親族からの資金援助–贈与税を課せられずに貰う方法とは?–

不動産コラム

マイホーム購入の際、親族から資金援助を受けるケースがあります。そのおかげで物件の選択肢が広がったり、住宅ローンの借り入れを減らしたりと、効果は様々です。ただし日本の法律上、たとえ親子だとしてもお金のやり取りがあると「贈与税」が発生してしまいます。少しでも贈与税を抑えて、マイホーム購入資金を援助してもらえる方法がないか探ってみましょう。

年間110万円までは非課税で受け取れる

贈与税は元々、税率が10%から最高55%と非常に高い税金です。しかし知っておいて損がないポイントが一つあります。それは「基礎控除」です。贈与税に関しては所得制限などなく、全国民に等しく「110万円まで非課税」とされているのです。逆に言い換えると、110万円を超える金額の贈与だと税金が発生することになります。基礎控除は毎年、利用することが出来る制度です。毎年110万円を10年間貰い続けると、最終的に1100万円を非課税で受け取ることが出来ます。マイホーム購入時には数百万円単位で援助を受けることが多いですが、「数年後に必ず購入する」という計画がある場合には、前もって計画的に基礎控除の範囲で贈与を開始するのも一つの方法です。なお基礎控除は資金の使い道に制限がありません。

「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」を利用する

基本的に資金の贈与があると税金が発生しますが、実は「マイホーム購入資金」という目的に限っては贈与税を免除しようという特例があります。この特例では、自分の実父母・祖父母からの資金援助であれば500万円まで、省エネや耐震などの条件を満たした住宅であればさらに500万円上乗せして1000万円までが、非課税で受け取れるのです。

ここで一点注意が必要なのが、親族の範囲です。この特例が適用されるのは「直系尊属」と言って実の親から子へ、祖父母から孫への贈与です。配偶者の両親や祖父母は適用外となりますので、そのままにしておくと夫婦間で贈与が発生したと受け取られます。この場合には配偶者との共有名義にし、配偶者が特例を受ける形にしましょう。

また、先ほどの毎年110万円の基礎控除と併用することも可能です。110万円+500万円(もしくは1000万円)までを非課税枠として利用することが出来ます。

特例を利用するには要件を満たすことが必要

「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」は実は2021年12月末で期限切れだったのですが、2023年12月末まで延長されました。

また、「贈与を受ける人(=受贈者)に関する要件」と「住宅に関する要件」の大きく2つの要件を満たす必要があります。主なポイントは次のとおりです。

①受贈者に関する要件

  • 贈与者(贈る人)の直系卑属(子や孫)であること ※配偶者の親や祖父母は対象外
  • 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること ※成年年齢が引き下げられたことにより20歳から18歳に変更となっています。ただし2022年(令和4年)3月31日以前の贈与については「20歳」となります。
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること(床面積が40㎡以上50㎡未満の場合には、1,000万円以下)
  • 贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、贈与された住宅取得等資金の全額をあてて住宅を購入し、住み始めること ※贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していない場合には、この特例の適用を受けることが出来なくなります。

②住宅に関する要件

  • 日本国内にある住宅であること
  • 床面積(マンションなどの区分所有建物の場合には、その専有部分の面積)が40㎡以上240㎡以下で、その2分の1以上を受贈者の居住の用に供されるものであること ※ここでいう床面積は「登記面積」です。パンフレット上の面積より若干小さくなるので確認が必要です。
  • 建築後使用されたことのない住宅用の家屋
  • 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、昭和57年1月1日以後に建築されたもの
  • 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、一定の書類により証明されたもの

これまでは「中古住宅」については築年数の制限がありましたが改正で撤廃されています。

詳細は国税庁のHPで再確認してください。

No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

なおこの特例においては、贈与された資金は必ず物件の購入代金に充てなくてはなりません。購入に係る諸費用や、インテリア代、引越し代などには使用することが出来ません。基礎控除110万円とは区別して利用しましょう。

必ず確定申告しよう

贈与を受けた場合には、贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までの間に、「確定申告」をする必要があります。事前に計算して非課税となる金額だったとしても、また結果的に非課税枠に収まっていたとしても、確定申告していなければ無意味となります。税務署からの問い合わせや調査によって無申告が発覚した場合には、無申告課税や延滞税が課せらることになります。せっかくの有効な節税手段を棒に振ってしまいますので、申告を忘れないようにしましょう。