団体信用生命保険−どういう場合にローンが0円になる?−

不動産コラム

住宅ローンには必ず団体信用生命保険が付いています。支払い途中でその人に万が一のことがあった場合に、残っている住宅ローンを保険で全て肩代わりしてくれる仕組みです。
ですが、「万が一」とは一体どのような状況で、どこまでをカバーしてくれているのでしょうか。本人が死亡した場合はもちろんですが、加入している保険の種類によって範囲が大きく異なります。

一般団信

まず、基本的な団体信用生命保険は「死亡した時」と「高度障害が残った時」に保険料が支払われます。この高度障害とはどれくらいの状態を指すのでしょうか。例えばフラット35 (住宅金融支援機構)の団信では下記の状態と指定しています。※

  • 両眼の視力を全く永久に失った状態
  • 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失った状態
  • 中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要する状態
  • 胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要する状態
  • 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失った状態
  • 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失った状態
  • 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失った状態
  • 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足首以上で失った状態

このように高度障害とは視力や言語機能を失ったり、寝たきりになったり、手足2本以上が切断や麻痺等で動かせないという、相当に重い障害状態を指します。

この基準は労災や障害年金などの等級、公的介護保険の要介護認定とは異なる保険会社独自の基準なので、障害等級の認定があるからといって、高度障害保険金が支払われる(住宅ローンが返済される)とは限らないので注意が必要です。

(※2017年9月30日までの旧制度の内容です)

フラット35 の一般団信が進化

住宅金融支援機構の一般団信は、以前は年払い形式でした。年に一度まとまった金額が引き落としになるので、支払い忘れによる「うっかり脱退」が問題となっていました。最近では保険料が利率に含まれるようになり、毎月の支払いと一緒に支払う形となりました。(2017年10月1日以降)

さらに、一般団信は上記の高度障害保障から「身体障害保障」に変更になりました。これまでの高度障害の内容は非常に深刻な状態であるのに対し、身体障害保証では障害者手帳の1級・2級に該当する状態であれば保険料が支払われます。

(詳細はこちらをご覧ください。https://www.flat35.com/files/400343279.pdf)

がん保障特約

一般団信の保証内容にプラスする形で、がん保障特約が付いている保険も人気です。がんと診断確定された場合には、保険料で住宅ローンの残債を支払います。(ただし皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がん」や「上皮内がん(子宮頸がん0期、大腸粘膜内がん、非浸潤がん、食道上皮内がんなど)」は、がん診断保険金の支払い対象となりません。)

通常は、金利に0.1%~0.2%上乗せされることがほとんどです。銀行によっては、金利の上乗せなしで「残債の50%」を保障する商品も出てきました。

日本人の2人に1人ががんになると言われる時代ですので、がん保障付きを検討する人は多いようです。ただし、がん保障の団信に加入出来る年齢は「50歳未満」や「51歳未満」とする銀行がほとんどです。出来るだけ若いうちに住宅ローンを組んだ方が良いと言われるのは、こういった制限があることも一つの要因です。

3大疾病保障特約

がん保障に加え、「急性心筋梗塞」「脳卒中」までカバーしてくれるのが3大疾病保障特約です。日本人の死亡原因の上位を占める疾病に対応した保険です。ただし、この病気になれば保険料が支払われると言う単純なものではなく、それぞれの病気に詳細な規定があるのです。

例えば、先ほどと同様フラット35の機構団信での3大疾病特約では次のようになります。

【急性心筋梗塞】

下記のいずれかに該当したとき

  • 急性心筋梗塞を発病し、初めて医師の診療を受けた日から60日以上、労働制限が必要な状態が継続したと医師に診断されたとき
  • 急性心筋梗塞を発病し、その急性心筋梗塞の治療を直接の目的として、病院等で手術を受けたとき

【脳卒中】

下記のいずれかに該当したとき

  • 脳卒中を発病し、初めて医師の診療を受けた日から60日以上、言語障害、運動失調、麻痺等の神経学的後遺症が継続したと医師に診断されたとき
  • 脳卒中を発病し、その脳卒中の治療を直接の目的として、病院等で手術を受けたとき

あくまでも団信の保険開始後に該当しなくてはならず、保険開始前に発症した病気が原因であった場合には保険料は支払われません。

これ以外にも7大疾病や8大疾病など保障範囲が広い保険もありますが、その分金利が上乗せになり毎月の負担額が増えてしまいます。そこまで団信を付ける必要があるのか、保険をトータルに見直してみると良いでしょう。

なお、気をつけなくてはならないのは「借替え」を行う時です。がん特約の団信に加入できる年齢を超えていた場合、これまで加入していた保険の方が保障が手厚い場合があります。既存の住宅ローンを完済した時点で保険の契約も一旦終了し、新しく保険に入り直す形となりますので注意しましょう。