不動産広告のルール「表示規約」とは?2022年9月改正のポイント

不動産コラム

家探しをする時にまず皆さんが目にするのはインターネットやチラシ、情報誌などさまざまな媒体だと思います。これらの不動産広告は、「不動産の表示に関する公正競争規約(以下、表示規約)」そして「表示規約施行規則」によって非常に細かくルールが決められています。実は10年ぶりとなる2022年9月にこのルールが改正されました。具体的にどのような変更がなされたのでしょうか。

不動産の「表示規約」とは

全国の不動産にはさまざまな物件があります。選ぶ側である消費者が正確に情報を知るために、また公正な取引がなされるためには「統一ルール」が不可欠です。そこで不動産公正取引協議会では「物件のどんな情報を掲載するか」「掲載する情報はどのような基準で表示するか」といった自主規制ルールを定め、運用しています。これが「表示規約」で、さらに公正取引委員会と消費者庁から認定を受けています。

「表示規約」では土地、新築分譲住宅、中古マンションなど物件の種類ごとに、表示しなくてはならない項目を定めています。例えば「新築」と表示できる物件は、「完成後1年未満、かつ未入居の物件に限る」といった具合です。またよく知られているのが「徒歩1分=道路距離80m」「1畳=1.62平方メートル以上」といったルールです。

消費者庁から認定を受けていることから、表示規約は「消費者保護」の目線で改正が行われます。消費者の利益になることはあっても、不利益になるような改正はされません。

改正の目玉は「徒歩所要時間」に関すること

今回の改正での大きな変更点は、「徒歩〇分」という距離に関する表示についてです。家探しをする際に、最寄り駅やバス停までどのくらいの距離か、徒歩何分かかるのかは非常に重要なポイントとなります。交通の利便性だけでなく、小中学校などの教育機関、日常の買い物や医療機関など、日常生活のいろんな場面で「距離」は重要です。「1分=80m」という基準は変わりませんが、問題となるのは「どこ(起点)から、どこ(着点)までの距離か」です。実は改正前はその施設などから最も近い物件(敷地)の地点を起点または着点としていました。つまり、一定規模の分譲地や複数棟あるマンションなどでは、一番近いところからの距離を表示すればよかったのです。そのため一番遠い分譲地や一番奥に建っているマンションからは、表示時間内に到着することは到底不可能でした。

そこで今回の改正では、「最も近い物件からの距離+最も遠い物件からの距離」二つを明示することとなりました。

改正前「A駅まで徒歩5分」 

    → 改正後「A駅まで徒歩5分から7分」

また公共施設や商業施設については、道路距離に代えて所要時間での表示も可能になりました。

改正前「○○区役所まで300m」 

 →改正後「○○区役所まで300mから400m」

     「○○区役所まで徒歩5分~8分」

ここで注意点があります。すでにマイホームを購入済みの方が購入当時「徒歩5分」の物件と表示されていても、売却時には「徒歩7分から9分」と表示される可能性があるのです。

実は、改正前は「敷地の一番近いところ」を起点としても問題ありませんでした。ところが「起点を建物の出入口とする」と改正されたため、マンションではエントランスやサブエントランスを起点とすることになります。改めて所要時間を計算し直すと、表示時間が数分変わってしまうのです。

また駅までの距離では改札口ではなく「駅の出入口」を着点とします。地下鉄などは地上の出入口から改札口まで距離がありますので、誤解しないように注意しましょう。

「乗換に必要な時間」も明示することに

通勤や通学で2つの路線を乗り継ぐ方も多いでしょう。この点についても「乗換えを要するときは、その旨を明示し、所要時間に乗換えに概ね要する時間 を含めること。」に変更しました。

改正後 「最寄りのA駅からC駅まで30分~33分」

※ B駅で●●線に乗り換え  

※ 上記所要時間には乗換え・待ち時間が含まれています。

また、「平日の昼間と朝のラッシュの時間とでは、所要時間が全然違う」といった現実があります。そこで「朝の通勤ラッシュ時の所要時間 を明示し、平常時の所要時間をその旨を明示して併記できる」と変更しました。

改正後「A駅からB駅まで通勤特急で35分」 ※ 平常時は特急で25分

特定事項の「明示義務」

土地が擁壁によって覆われていないがけの上又はがけの下にあるときは、その旨を明示することとしていましたが、建物を建築する場合に制限が加えられているときは、 その内容も併せて明示することになりました。

改正後 例)※ 本物件は擁壁に覆われていないがけ 下にあるため、建築する際は建物の主 要構造部を鉄筋コンクリート造にする 必要があります。

こうした消費者に不利になる件については、きちんと明示しなくてはなりなせん。

未完成の新築住宅等の外観写真について

建物が未完成等の場合、同一でなくても以下の条件に該当すれば、 他の建物の外観写真を表示できることとしました。

・ 取引する建物を施工する者が過去に施工した建物であること

・ 構造、階数、仕様が同一であること

・ 規模、形状、色等が類似している なお、この場合において、当該写真を大きく掲載する等取引する建物であると誤認されるおそれのある表示をしてはなりません。

改正後

※「施工例 ※取引する建物とは、外壁、屋根開口部等の 形状が異なります。」

※「前回販売したA号棟の外観写真です。扉や窓の開口部 の位置等のデザインが異なります。」

「広告に掲載されていたもの=実際のもの」ではないケースがあることを認識しておきましょう。

不動産広告は文言をしっかり読み、出来れば現地で確認することも念頭に置いて物件探しをしましょう。

参考:「表示規約同施行規則 主な改正点」 2022年 9月1日施行 不動産公正取引協議会連合会