「ホームインスペクション」という言葉をご存知ですか?これは「住宅診断」や「住宅検査」と呼ばれるもので、住宅(建物)の施工不具合や劣化状態を確認し、補修が必要な箇所、その時期などを客観的に診断する作業を意味します。
現在日本では増え続ける空き家問題があり、どちらかというと新築よりも中古住宅の売買を活発にしていく施策が進められています。そこで、2016年に建物状況調査(インスペクション)を盛り込んだ宅建業法の改正があり、2018年4月1日からは「ホームインスペクションの義務化」が施行されています。
義務化は中古住宅のみ
ホームインスペクション義務化の対象となっているのは、中古住宅のみです。従来の日本では、古くなったら建て替えるのが主流だったため、他の先進国に比べて中古住宅の流通割合が低いと言われてきました。そこで中古住宅の取引件数を増やすために、少しでも取引の透明性を高め、買主の不安を払拭しようとホームインスペクション義務化を採用したのです。
またホームインスペクションは、一級建築士や既存住宅状況調査技術者の資格を持った人が行います。専門的な知識を持ったインスペクターが第三者的な立場から住宅を診断し、アドバイスを行う専門業務となります。補修にどのくらい費用がかかるのかも、インスペクターが算出します。
「ホームインスペクションの説明」を義務化
「ホームインスペクションの義務化」と聞くと、インスペクションを行うことが義務付けられた?と誤解する人も多くいます。実は、2018年4月から義務化されたのはインスペクションの実施そのものではなく、不動産業者が中古住宅売買において行う次の3点です。
①媒介契約(住宅を売買仲介するための契約)を締結する際に、インスペクション事業者を斡旋できるかどうかについて告知する義務(34条の2 第1項第4号)
②重要事項説明(売買する際に必ず伝えておかなければならない項目の説明)の際に、インスペクション内容についても説明する義務(35条 第1項第6号の2)
③売買契約が成立した際に、建物状況について売主・買主双方が確認した事項を記載した書面を交付する義務(37条 第1項第2号の2)
つまり、インスペクションに関して要望があれば対応し、実施したインスペクションの診断結果を伝え、書面にして残すことが義務付けられたのです。
これまでと大きく違うのは、不動産業者は売主・買主に聞かれなくてもホームインスペクションに関する業務について積極的に説明しなくてはならない点だと言えます。
ただし、前述の通り「ホームインスペクション実施」そのものの義務化ではないため、実施するかどうかは売主・買主双方の意思による点は変わりありません。
売主側のメリット・デメリット
では中古住宅を売る側としてのメリット・デメリットはどんなことがあるでしょうか。
【メリット】
- 売買する前に建物の瑕疵や不具合が判明する
- 売却前に補修をしておくことで売りやすくなる(PRになる)
- 瑕疵等がある場合、飼い主へ告知した上で売却できる。(重要事項説明で告知することで後に責任追及されない)
- 売却後に買主とのトラブルを回避できる
【デメリット】
- 補修が困難なもの、費用が高額な補修箇所が発見される場合がある。
- 瑕疵等が発見された場合、売主負担で補修する必要性と費用負担が発生する。
- 瑕疵等が発見された場合、補修しないと売却困難になる。もしくは値下げの要因となる。
- 目視できない箇所に瑕疵があった場合、100%確認できないこともある。
買主側のメリット・デメリット
反対に、中古物件を買う側のメリット・デメリットはどんなことがあるでしょうか。
【メリット】
- 専門家によるインスペクション結果で、購入の判断がしやすくなる。
- インスペクションの結果が良い場合、安心して購入できる。
- インスペクションで問題があった場合でも、補修(リフォーム等)の負担を検討することも可能。
- 将来の補修、リフォームの計画が立てやすくなる
【デメリット】
- インスペクションの結果で大きな問題が発覚した場合、購入を諦めなければいけないこともある。
- 目視ができない場所に瑕疵等があるかもしれない(100%確認することができない)。
- インスペクション実施は義務ではないため、調査中に他の希望者が購入してしまう可能性がある。
- 買主側の費用負担が発生することがある。
インスペクター選びも重要
インスペクションを行う業者は、中立性が重要となります。より第三者的な立場で調査とアドバイスをしてくれる業者を選びましょう。
できれば、インスペクション実施の際には現場で立ち会うことをおすすめします。実際に調査をした専門家から説明を受けるチャンスですし、内容をよく理解するのにも役立ちます。
中古住宅をより安心して売買するために、ホームインスペクションを有効に活用しましょう。