ペアローンの「連生団信」の落とし穴!保険金が一時所得になるって本当?

不動産コラム

夫婦で2本の住宅ローンを組む「ペアローン」は、マンション価格が上昇する中で多くの人が利用しています。これまではペアローンでの団体信用生命保険はそれぞれが加入し、夫婦どちらかに万が一のことがあったときには片方の債務だけ弁済されるタイプでした。夫が亡くなった場合夫の住宅ローンは0になりますが、妻の住宅ローンはこれまでどおり支払いが続きます。

ペアローンの利用者が増加する中、新しく登場したのが「ペア連生型団信」です。「ペア連生型団信」では、夫婦のどちらか一方が死亡または高度障害の状態になったときに、ローン残高の全額(ペアローンの場合は2人分合計のローン残高)がゼロになります。万一の際に残された家族の経済的な負担を大きく減らす保障として、注目度が高くなっています。メリットだらけの「ペア連生型団信」ですが、実は税務上知っておくべきポイントがあります。

知らないと損?「ペア連生型団信」の落とし穴

通常の団信と比べてペア連生団信では相手方の保障も含むため、保険料が高くなってしまいます。金利上乗せ分で0.1~0.3%が一般的です。また夫婦が揃って、健康状態に問題がないことも必須となります。

こうした注意点に加えて、「ペア連生団信」には所得税が課税される可能性があるのです。これについては、説明書に小さく記載されていることが多いのですが、見逃していたり軽く考えていると将来大変なことが起きてしまいます。

税法上の考え方

通常、支払われた団信の保険金は全額住宅ローンの弁済に充てられるので、「所得」とはみなされません。つまり団信の保険料は「儲け」ではないという判断になります。

一方、「ペア連生団信」ではどうなるのでしょうか。例えばペアローンで夫:3000万円、妻:2000万円の借り入れをしていたとします。夫が死亡した場合に、夫の残債が0円となるのは上記と同様です。その上でペア連生団信では妻のローン残債も0円になります。問題は、妻のローン残債に充てられた2000万円分の保険料です。

保険金が支払われた時点では、妻の健康状態には何も問題がありません。それなのにこれ以降住宅ローンの返済をしなくても済むのです。もちろん、それを目的としてこれまでそれ相当の料金を支払っているわけなのですが、税務上では「2000万円分の経済的を得た」と見なします。つまり、妻は2000万円分の所得を得た、儲けがあったという見方をされるのです。

所得があったとなると、これに対して「所得税」が課税されることとなります。

所得と見なされた場合いくら税金がかかる?

では2000万円のペア団信保険料が一時所得とみなされた場合、どのくらいの税金が課せられるのでしょうか。

一時所得の計算式は次のようになります。

  1. 総収入金額 - 収入を得るためにかかった経費 - 特別控除額(50万円)= 一時所得
  2. 算出された一時所得の額の2分の1の額を、給与所得などに合算して税額を計算する。

(1)2000万円 -(経費なし)- 特別控除50万円 = 1950万円

(2)1950万円×1/2 = 975万円

この975万円を課税所得に上乗せして税金が計算することになります。

例えば、この妻の年収が400万円だった場合、一時所得がない場合の所得税は約8万円、住民税は約17万円となる計算です。

連生団信の保険証が一時所得となった場合、975万円課税所得がアップすると、所得税は226万円程度、住民税は115万円程度に増額されます。年税額が約25万円から約341万円へ、実に大幅な増額です。

残っていた2000万円の住宅ローンの支払いがなくなったとはいえ、2000万円の一時所得は、相当な経済的利益と判断されます。

夫婦連生団信は本当に一時所得になるのか?

上記の理論でいくと、「ペア団信の保険金は、相手方の一時所得となり税金が発生する」ことになります。これでは「万が一のために対策しておいたのに、裏目に出てしまう」と感じてしまいます。

実際にこうしたケースで税務署から課税されてしまうのでしょうか・・・

結論としては「ペア連生団信でローンが免除された場合、一時所得として課税されることは基本的にありません。」

というのも団信の性格上、ペア連生団信でのローン免除は「借金の消滅」であって、一時所得に該当しないと判断されるからです。「一時所得」とは、その名のとおり一時的に得た利益を指します。具体的には保険の満期金や懸賞金など、労働や資産運用以外で得られる金銭です。

団信も保険金に変わりありませんが、実際の保険金は全額ローンの一括返済に充てられます。さらに保険金の流れは保険会社から直接金融機関に支払われ、即返済となります。被保険者の口座を経由せず、実際には保険金を受け取ることができないので、他の用途に使用することは不可能です。

一見「利益を得た」ように見えますが、ローンの借り入れ(=借金)が免除される事態は、「ローンの契約終了」と見なされます。この問題に関して、国税庁での見解は「団信による返済免除は所得には該当しない」所得税法基本通達9-22としています。実際には、税務署が厳しく税金の支払いを取り立てに来るような事態にはならないようです。

ただし、銀行側の注意書きにもあるように一時所得とみなされて課税される可能性があるということには変わりありません。

最終的には税務署の個別判断となりますので、注意はしておきましょう。