近年「定期借地権付き」の分譲マンションが増えています。これは文字通り土地が借地(借り物)の権利形態で、東京・大阪・愛知などの大都市圏では顕著に増加しています。定期借地権のマンションはどういった特徴があるのでしょうか。メリット・デメリットや、どういった人が向いているのかを解説します。
分譲マンションにおける土地の権利形態:所有権と定期借地権とは
分譲マンションの購入では、建物の専有部分とともに土地の権利も取得します。その土地の権利には「所有権」と「定期借地権(ていきしゃくちけん)」の2種類があり、それぞれに特徴があります。
所有権とは、購入者がマンションの敷地の一部を持分として“永久的に”所有する権利であり、自由に売買や相続が可能です。分譲価格は土地代+建物代の合計金額になっています。
一方で、定期借地権付きマンションでは、土地はあくまで地主から借りているものであり、契約期間(多くは50年または70年)が終了すると返還しなければなりません。この場合、マンション自体は所有できますが、土地は所有できません。当然、分譲価格の中に土地代は含まれませんが、毎月「地代」という費用が発生します。
定期借地権付きマンションのメリット
近年、特に都心部や駅近エリアで定期借地権の分譲マンションが増えています。これは、地価が高く、土地を売却せずに有効活用したい地主と、利便性の高い立地で手ごろな価格で住宅を手に入れたい購入者のニーズが一致するためです。
以下に、定期借地権マンションの主なメリットを挙げます。
① 購入価格が安い
土地の所有権を買わない分、販売価格は所有権マンションより2~3割程度安い傾向があります。同じ立地でも手が届きやすく、利便性の高い地域に住めるチャンスとなります。
② 固定資産税が抑えられる
土地を所有しないため、土地部分の固定資産税・都市計画税はかかりません。建物部分の税金だけで済むため、ランニングコストも抑えられます。
③ 相続税対策になる
土地を所有しないため、相続財産の評価額が低くなり、相続税の節税につながることがあります。地主側にも同様の節税効果があるため、土地活用としても人気です。
定期借地権マンションのデメリット・注意点
一方、定期借地権には独特の注意点やデメリットもあります。購入前にしっかり確認することが大切です。
① 契約期間終了後は原則更地返還
定期借地権は更新がなく、契約満了後は建物を解体し、更地にして地主に返還するのが原則です。そのため、マンション自体の資産価値は、期間が経つごとに大きく減少します。
② 売却が難しい
所有権と比べて需要が限られ、再販時に売りづらい傾向があります。残存期間が短くなると価格が急落し、ローンが残っていても売却益では足りないケースもあります。中古マンションになった際の次の買主は所有できる期間が短くなっているため、非常に間口が狭くなってしまいます。
③ ローン審査が厳しくなる場合がある
一部の金融機関では、定期借地権付きマンションに対する住宅ローンの取り扱いが限定されることがあります。また、借地期間を超えるローンは組めない場合があるため、借入条件に注意が必要です。
④ 解体費用などの積立が必要
契約終了後に建物を取り壊す必要があるため、解体費用を管理組合で積み立てる必要があります。このため、修繕積立金とは別に「解体積立金」が設定されることもあります。
どんな人に向いているか?
定期借地権付きマンションは、次のような人に向いています。
・資産性より「立地」や「居住性」を重視する人
・子どもに資産を残す必要がない単身者やDINKS世帯
・将来の住み替えを前提にしている人
・相続税対策を意識する高齢者世帯
逆に、「長く住み続けたい」「資産として残したい」「売却や賃貸を視野に入れている」という場合は、所有権マンションの方が適しています。
定期借地権付きマンションは、都心の好立地に比較的手頃な価格で住めるという大きな魅力があります。ただし、契約期間終了後の返還義務や資産価値の減少といった制約もあるため、自分のライフプランや資産形成方針に合った選択が必要です。所有権のマンションに比べ価格が安いケースが多いですが、毎月のランニングコストで比較すると意外と高くなってしまう現実があります。購入の際は、契約内容(期間・更新・地代・解体義務など)を必ず確認し、将来的なリスクと向き合うことが重要です。