ペットと暮らしたい――そんな思いを抱える人は年々増えています。しかし、分譲マンションでは管理規約によってペット飼育が禁止されているケースも少なくありません。実際には「ペット不可」とされているマンションでも、住民がこっそり犬や猫を飼っている事例も見受けられます。
この記事では、そうした現状を踏まえつつ、ペット飼育可能へと管理規約を変更するためのプロセスと、変更によって得られる資産価値向上の可能性について解説します。
実はこっそり飼っている?ペット不可マンションの現実
ペット禁止のマンションでも、実際には「鳴き声が聞こえる」「廊下にペットの毛が落ちている」など、飼育の痕跡が見られることがあります。こうした“隠れ飼育”は、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
• 騒音や臭いによる近隣トラブル
• アレルギーを持つ住民への健康被害
• 管理規約違反による警告・退去要求
このような状況は、住民間の不信感を生み、マンション全体の住環境を悪化させかねません。だからこそ、ルールを明確化し、適切な管理のもとでペット飼育を認めることが、トラブル防止につながるのです。
理規約変更には「特別決議」が必要
分譲マンションの管理規約を変更するには、区分所有法に基づく「特別決議」が必要です。これは以下の条件を満たす必要があります。
• 総会での出席者の議決権の4分の3以上の賛成
• 区分所有者の頭数でも4分の3以上の賛成
つまり、単なる多数決ではなく、かなり高いハードルをクリアしなければなりません。
ステップ①:理事会・専門委員会での検討
まずは理事会に「ペット飼育可能への変更を検討したい」という提案を行います。賛同者が複数いる場合は、専門委員会を立ち上げて議論を深めるのも有効です。 この段階では、以下のような準備が必要です。
• ペット飼育に関するアンケート調査
• 他マンションの事例収集
• 飼育細則(ルール)の草案作成
ステップ②:住民説明会の開催
変更案がまとまったら、住民説明会を開催します。反対派の意見にも耳を傾けながら、以下のような点を丁寧に説明しましょう。
• ペット飼育のメリット(居住満足度向上、資産価値の維持など)
• トラブル防止のための飼育細則(頭数制限、共用部の利用ルールなど)
• 飼育者への申告義務や違反時の対応
この説明会は、住民の理解と信頼を得るための重要な場です。
ステップ③:総会での特別決議
説明会を経て、いよいよ総会での決議です。管理規約変更には「特別決議」が必要となるため、事前に賛成票の見込みを把握しておくことが重要です。
議案には以下を含めると良いでしょう 。
• 管理規約の変更案(ペット飼育を可能とする条文)
• 飼育細則の新設案
• 施行日や申告方法などの運用ルール
ステップ④:規約の周知と運用開始
決議が可決されたら、変更後の管理規約と飼育細則を全住民に配布し、掲示板などでも周知します。賃貸住戸の入居者にも情報が行き渡るよう、オーナー経由での通知も忘れずに。
また、ペット飼育者には申告書の提出を義務付け、理事会で把握・管理できる体制を整えましょう。
ペット可マンションは資産価値にも好影響?
ペット飼育可能になることで、マンションの資産価値が向上する可能性もあります。以下のような理由が挙げられます:
✔ ペット需要の高まり
ペットと暮らせる住まいを求める層は年々増加しており、ペット可物件は中古市場でも人気があります。特に単身者やDINKs層からのニーズが高く、売却時の競争力が高まります。
✔ 物件の差別化
ペット不可の物件が多いエリアでは、「ペット可」という条件が希少性を生み、注目されやすくなります。ペット設備(足洗い場、ドッグランなど)が整っていれば、さらに付加価値が上がります。
✔ 高額査定の可能性
ペット可マンションは、条件に合う物件として選ばれやすく、価格交渉が有利になるケースも。ペットを飼っていなかった場合は室内の状態が良好で、高値での売却が期待できます。
注意点:資産価値を下げないために
もちろん、ペット可にすることで逆に資産価値が下がるリスクもあります。以下の点に注意しましょう:
• 鳴き声や臭い、共用部の汚れなどへの苦情対策
• 飼育細則違反者への対応(警告・飼育禁止措置など)
• 室内の傷や臭いが残っている場合の修繕・消臭対策
ペットを飼わない住民への配慮も忘れず、ルールの厳格な運用と透明性が求められます。
まとめ:暮らしの質と資産価値を両立するために
ペット不可からペット可への変更は、マンションの「暮らし方」を変える大きな決断です。こっそり飼育というグレーな状態を放置するよりも、ルールを整備し、住民全体で合意形成を図ることが、安心で快適な住環境につながります。
そして、ペット可にすることで得られる「暮らしの満足度」と「資産価値向上」の両面を意識すれば、より前向きな議論が生まれるはずです。
まずは理事会への提案から、一歩踏み出してみませんか?