結婚を機にマイホームを購入する夫婦は多くいます。しかし、人生には予期せぬ出来事が起こるもの。離婚という選択をしたとき、住宅ローンが思わぬトラブルの火種になることもあります。今回は、住宅ローンを借りる前の注意点、購入後に離婚する場合の対応策、そして離婚後に住宅ローン審査を受ける際のポイントについて詳しく解説します。
住宅ローンを借りる前に考えるべきこと
結婚して共同で住宅を購入する場合、住宅ローンの契約形態によって将来のリスクが大きく変わります。特に以下の点に注意が必要です。
1. 連帯債務・連帯保証の違いを理解する
連帯債務:夫婦が共に債務者となり、どちらか一方が返済できなくなった場合、もう一方が全額返済義務を負います。
連帯保証:主債務者(例:夫)が返済できない場合に、保証人(例:妻)が代わりに返済する義務を負います。
離婚後もこの責任は残るため、契約時に慎重な判断が必要です。
2. 持分割合と登記の確認
住宅の所有権を夫婦で分ける場合、登記上の持分割合が重要です。たとえば、夫が70%、妻が30%の持分を持つ場合、売却時の利益配分や離婚後の処理に影響します。曖昧なままにしておくと、後々トラブルの原因になります。
3. 返済計画は現実的に
共働きで収入が安定しているからといって、無理な返済計画を立てるのは危険です。離婚によって収入が減る可能性もあるため、単独でも返済可能な範囲でローンを組むことが理想です。
離婚後に住宅ローンが残っている場合の対応
離婚後も住宅ローンが残っている場合、以下のような選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、状況に応じた判断が求められます。
1. 売却してローンを完済する
もっともシンプルな方法は、住宅を売却してローンを完済することです。ただし、売却価格がローン残高を下回る「オーバーローン」の場合、自己資金で差額を補う必要があります。
2. 一方が住み続け、ローンを引き継ぐ
たとえば、妻が子どもと住み続ける場合、妻がローンを引き継ぐケースがあります。ただし、金融機関の承認が必要であり、収入や信用情報によっては引き継ぎが認められないこともあります。
3. 共有名義のまま維持する
離婚後も共有名義のまま住宅を維持するケースもありますが、これは非常にリスクが高いです。元配偶者が返済を滞納した場合、自分にも影響が及びますし、将来的な売却や相続の際にも複雑な手続きが必要になります。
離婚後の住宅ローン審査で問われる「慰謝料の支払い」
最近離婚したばかりの方が住宅ローン審査を受けた際、「慰謝料の支払いはあるか」と金融機関から尋ねられるケースがあります。これは、申込者の返済能力を正確に把握するためです。
慰謝料の支払いがある場合、それは継続的な支出とみなされ、以下のような影響があります。
・返済比率(返済負担率)が高くなる
・可処分所得が減るため、借入可能額が下がる
・支払いが滞るリスクがあると判断される可能性
審査時に必要な書類
慰謝料の支払いがある場合、以下のような書類の提出を求められることがあります:
・離婚協議書または調停調書(慰謝料の金額・支払い期間が記載されたもの)
・支払い実績が分かる通帳のコピー
・その他、支出として計上される証明書類
審査通過のための対策
住宅ローンの審査を進める上では、下記の点に留意しましょう。
・借入額を抑える
・頭金を多めに用意する
・共同名義や連帯保証人を検討する
・慰謝料の支払いが一時的であることを説明する(例:「あと6ヶ月で終了」など)
離婚協議書や公正証書で明文化を
離婚時には、住宅ローンや不動産の取り扱いについて、口約束ではなく文書で明確にしておくことが重要です。特に以下の内容は明文化しておきましょう。
・住宅の所有権をどちらが持つか
・ローンの返済責任を誰が負うか
・将来的な売却や名義変更の条件
公正証書にしておくことで、法的な効力が生まれ、トラブルを未然に防ぐことができます。
住宅ローンは「離婚リスク」も視野に入れて
住宅ローンは長期にわたる契約です。結婚時には幸せな未来を描いていても、離婚という可能性を完全に排除することはできません。だからこそ、契約時には冷静にリスクを見極め、万が一の事態にも備えておくことが大切です。
不動産は「資産」であると同時に、「負債」にもなり得ます。離婚後に後悔しないためにも、夫婦でしっかり話し合い、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めましょう。