奨学金を返済中 住宅ローン審査への影響は?

不動産コラム

住宅ローンのご相談や資金計画をしている中で、たまに「実は奨学金を払っているんですが、これは申告しないとだめですか?」というお話を聞くことがあります。学生時代の奨学金はマイホームを購入しようとする人にとってはかなり前の出来事かもしれません。しかも半ば公的な借り入れであるためか、申込時に申告漏れしたり「黙っていてもバレないのでは」と考えてしまうことも。

結論から言えば、奨学金の申告漏れ・申告隠しは住宅ローン審査においてはリスクになります。

奨学金制度とは

ここで、奨学金を多くの人が利用している「独立行政法人 日本学生支援機構」のホームページを見てみましょう。

奨学金には実は種類があり、一つは「給付奨学金」もう一つは「貸与奨学金」です。名称を見ても分かる通り、給付奨学金は貰える奨学金なので返済不要です。審査基準が厳し目となっています。後者の貸与奨学金は借入れとなり、返済が必要となります。貸与奨学金はさらに無利子と有利子の2種類に分かれています。貸与奨学金よりも審査のハードルは低くなっています。

奨学金を借入れした時の個人信用情報はどうなる?

元々、公的な機関である独立行政法人が取り扱う奨学金制度は、個人信用情報機関とは無縁の存在でした。クレジットカードを作る時やマイカローンを借りる時などには個人信用情報機関に登録されますが、奨学金を借入れしただけでは個人信用情報機関への登録は行われません。「奨学金は、黙っていてもバレない」という噂はこうした背景があるからだと思われます。

しかし、長引く不況から会社の倒産やリストラが頻発します。学生自身も、就職先を辞めてしまうこともあり、次第に延滞が増加し返納率が著しく低下して行きました。こうした事態を受け、2008年11月に制度が大きく改正されることになりました。

延滞情報は個人信用情報機関へ登録される!

2008年11月のプレスリリースにはこう記載されています。

『返還開始後一定 の時期における延滞者について、当該延滞者の情報を個人信用情報機関に提供することによ り、延滞者への各種ローン等の過剰貸付を抑制し、多重債務化への移行を防止することは、教 育的な観点から極めて有意義であるとの提言を受け、延滞者に限って、その情報を個人信用 情報機関へ提供することとして、本年11月に全国銀行個人信用情報センターに加盟しました』

つまり、延滞者に限っては全国銀行個人情報センター(KSC)に登録されてしまうことになったのです。対象者は(1) 貸与中の者(2) 平成21年度以降の新規採用者(3)返還中の者、つまり利用している全ての人となります。

登録される時期は

登録される時期は

・延滞3ヶ月以上となった者。ただし、新規返還者については返還開始後6ヶ月経過時点で延滞3ヶ月以上の場合。6ヶ月経過以降は、延滞3ヶ月になった時点。となっています。

さらに、「機構以外からの借用情報(奨学金以外のローンの返済状況等)を入手し、多重債務に陥っているような場合には、即時に法的処理に入ります。」とあります。延滞者に対しては、厳しい措置が取られるようになったようです。

住宅ローン審査への影響は?

奨学金は借入れする段階(与信審査)に加え、順調に返済し続けている限り個人信用情報が登録されることはありません。3ヶ月以上連続して延滞してしまうとKSCに登録されます。

個人信用情報機関と言うと、「CIC」や「JICC」を思い浮かべる人が多いと思いますが、実はそれぞれ扱う分野が違っていてもCRINという相互交流ネットワークで情報を共有しています。つまり、一度KSCに登録されてしまった延滞情報はCICやJICCにも筒抜けとなってしまうのです。返還完了の5年後まで情報は消されることなく残ってしまいます。

住宅ローンの審査では個人信用情報をチェックされるのは周知の事実ですが、申込人からの申告と照らし合わせる作業も行います。「この人は、自分の借金を把握しているか」という観点で審査するのです。申告漏れは借入れを自覚していないと受け取られ、非常に心象が悪くなります。申告漏れが一つでもあれば、即審査を中断してしまうような金融機関もあるほどです。

住宅ローンの借入れ金額は、住宅ローンそのもの+その他の借入れを含めた総返済負担率が規定の範囲内であることが大前提です。奨学金借入れの事実を隠して住宅ローンの借入れが出来たとしても、将来延滞したりローン破綻に陥っては元も子もありません。

奨学金借入れはきちんと申告し、返済計画は「借りられる金額ではなく、返せる金額」で決めることが大事です。