マイホームの購入は人生で最も大きな買い物の一つ。だからこそ、先に“投資用マンション”を購入するという選択は、少し意外に聞こえるかもしれません。「資産形成を早く始めたい」「家賃収入でローンを賄えるならお得では?」という考えも確かに理解できます。しかし、自宅購入前に投資用マンションを買うことには、想定していないリスクも潜んでいます。
この記事では、投資用マンションを先に購入することのメリットと注意点を整理しながら、本当にそれが自分に合った選択なのかを見極めるためのヒントをお伝えします。
住宅ローン審査への影響は見逃せないリスク
最も大きな注意点は、投資用マンションの借入が、後の住宅ローン審査に影響する可能性があるということです。
通常、投資用物件を購入する際は「不動産投資ローン」などの事業用ローンを利用します。これ自体は住宅ローンとは別枠ですが、金融機関の審査ではすでに借入があることや、毎月の返済負担が増えることを考慮されます。
つまり、将来的に自宅を購入しようとしたときに、「すでに借入額が多い」と判断されると、希望額の融資が通らない可能性があるのです。投資物件からの家賃収入が安定している場合は審査で考慮されることもありますが、空室リスクや収入の変動があるため、必ずしもプラスには働きません。
例えば年収1000万円の方がすでに投資用マンションのローンを3000万円組んでいる場合、住宅ローンの与信枠(借入可能額)は残りの返済能力と金融機関の審査基準によって大きく左右されます。
一般的に記入機関が設定している与信枠の目安は、年収の7〜10倍程度と言われています。
年収1000万円 × 7倍 → 約7000万円
年収1000万円 × 10倍 → 約1億円
この範囲が「総借入可能額」の目安です。
すでに投資用マンションで3000万円のローンを組んでいる場合:
与信枠が7000万円 → 残り約4000万円
与信枠が1億円 → 残り約7000万円
つまり、住宅ローンとして借りられる可能性があるのは4000万〜7000万円程度に減ってしまいます。
ただし、これはあくまで理論上の目安であり、実際の審査では以下の要素が加味されます。
・返済負担率:年収に対する年間返済額の割合(一般的に25〜35%以内が望ましい)
・投資用物件の収益性:家賃収入がローン返済をカバーしているか
・信用情報:滞納履歴や他の借入状況
・勤務先・勤続年数・資産状況:安定性や自己資金の有無
もしも投資用ローンがフルローンで、家賃収入が少ない場合は、住宅ローン審査に不利になる可能性があるので注意が必要です。逆に、投資用物件が黒字運用であれば、収入として加味され、与信枠が広がることもありま
空室・滞納は資産ではなく“負債”になることも
投資用マンションの最大の魅力は「家賃収入による資産形成」です。毎月のローン返済を家賃でまかない、将来的に売却や年金代わりに活用するという考え方は理にかなっています。
しかし、家賃収入があってこその話であり、空室や滞納のリスクは常につきまとうというのが実情。万が一、賃借人が退去して次の入居者が決まらない場合や、家賃の支払いが滞った場合は、ローン返済がすべて自己負担になります。
自宅をまだ購入していない状態でこのような事態が起こると、家計のキャッシュフローが悪化し、希望する自宅購入が遠のいてしまうこともありえます。
住宅ローン控除は使えない。税制面でも違いがある
住宅ローン控除は、居住用の住宅を購入した際に、借入残高の一定割合が所得税から控除される制度です。投資用マンションはこの制度の対象外となるため、税制面の恩恵を受けることができません。
また、不動産投資による収入は「事業所得」または「不動産所得」として扱われ、確定申告が必要になります。帳簿付けや税理士のサポートなども視野に入れておく必要があり、自宅購入と比べて手間がかかる点も注意です。
それでも“先に投資”が向いている人とは?
もちろん、すべての人にとって「リスクだからやめるべき」と断言できるものではありません。以下のような人には、先に投資用マンションを購入する選択肢も「有り」です。
・年収や資産に余裕があり、住宅ローン審査にほとんど影響しないと見込める人
・自宅購入のタイミングがまだ先で、資産形成を優先したい人
・投資用マンションの運用リスクや税務処理に慣れているか、専門家と連携できる人
・将来的に自宅として使用することも視野に入れた物件を選んでいる人
重要なのは、「不動産投資=儲かる」ではなく、「運用を続けるための責任を持てるかどうか」という視点です。
マイホームの夢と資産形成を両立させるには?
自宅購入前に投資用マンションを買うことは、たしかに魅力的な資産形成の選択肢です。しかしその裏側には、融資審査への影響、運用リスク、税制面の違いといった複数の注意点が潜んでいます。
将来的に「自宅も買いたい」と思っているなら、まずはその資金計画とローン審査の見通しを確認することが大切です。そして投資用マンション購入の判断は、「不動産を持つ」ことよりも、「持った後、どう運用し、どのようにリスクをコントロールするか」にかかっています。
不安がある場合は、金融機関や不動産会社だけでなく、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのも賢い選択です。