住民税決定通知書−住宅ローン控除との関係−

不動産コラム

会社員などの給与所得者は、毎年5月から6月にかけて、長細い帯のような書類が給与明細書と一緒に配布される人が多いのではないかと思います。この書類は「住民税決定通知書」(自治体によって名称は若干異なります)で、昨年の年収に対して決定した今年の住民税の金額が明記されています。(昨年の年収がアップした人は今年の住民税が上がることになります。)

この書類は、源泉徴収票と同じくあなたの昨年の税込年収が記載されているので、これから住宅ローンを申し込みしようとしている人にとっては大事なものになります。そして、すでに住宅ローン控除を利用している人にとっても、大事な情報が記載されています。

住宅ローン控除の仕組み

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを購入した人が、所得税の控除を受けられる税制の優遇です。年末残高(住宅ローンの残りの元金)の1%が戻ってくるありがたい制度ですが、限度額が設定されており最大40万円まで(認定長期優良住宅等の場合は50万円)となっています。

つまり、住宅ローンの残高が4000万円以上あれば、毎年40万円が10年返ってくる・・・というとても魅力的な話に聞こえます。

ただし、ここでちょっと冷静に考えてみなくてはなりません。原則、所得税からの控除ということは、それだけの所得税を支払っているのか?という点です。この税制優遇の財源はあくまであなたが一年間支払ってきた「税金」です。すでに納税した税金を後から取り戻す作業なのです。

つまり、住宅ローン控除で還付される金額は、あなたが支払っている所得税額で頭打ちとなってしまうわけです。

源泉徴収票を見てみよう

自分がいくら所得税を支払っているのかが簡単に分かる方法があります。毎月の給与明細書で「所得税」の欄に記載されている金額を合計しても構いませんが、ひと目で分かるのは「源泉徴収票」です。「源泉徴収額」の欄に記載されている金額が、あなたが年間支払ってきた所得税の金額になります。

ここの金額が40万円以上あり、かつ住宅ローンの年末残高が4000万円以上の人は、最大金額の40万円を控除する事が可能となるのです。

しかし、残念ながら源泉徴収額が40万円を下回っていた場合、控除しきれなかった部分については無駄になってしまうのでしょうか?

答えはNOです。控除しきれなかった部分については「住民税」で控除を受ける事が出来るからです。

制度改正により住民税からの控除が可能に

以前は所得税からの控除にとどまっていたこの制度ですが、なかなか景気が上向かない中少しでも国民のマイホーム取得を後押しし、住宅ローン控除による負担軽減効果を高める必要がありました。そこで、「平成21年度税制改正」によって定められたのが、所得税で控除しきれなかった税額控除分を個人住民税へスライドさせる制度改正です。

所得税と住民税、ダブルで控が可能になり、より住宅ローン控除の効果を実感する事ができるようになったのです。

具体的には、次の金額となります。

(住宅ローン控除の対象となるマイホームへの居住年が2014年4月から2021年12月の場合)

・住宅ローン控除の控除可能額の内、所得税から控除しきれなかった金額
・所得税の課税所得金額の7%(上限13万6500円)

※いずれか少ない方の金額となります。

住民税から控除を受けたい場合の手続きは?

さて、所得税からの控除に加えて住民税からの控除も受けたい場合、具体的にどのような手続きが必要となるでしょうか。

実は、住宅ローン控除の手続きを踏んでいるのであれば、「住民税控除」のための手続きは特に必要ありません!

住宅ローン控除の初年度の確定申告、2年目以降の年末調整での手続きをしていて、所得税から控除しきれない金額がある場合は、自動的に住民税が控除される仕組みになっているのです。

これは、個人住民税の税額を計算し、徴収する市区町村が、税務署や勤務先から住宅ローン控除を受ける人の申告情報を受け取っているからです。住民税を算出する過程で、必要な情報も自動的に行き渡っているのです。

何もしなくても住民税が控除されるのであれば、申告する側としては手続きをし忘れなども関係ないので非常にありがたいですね。

昨年マイホームに入居した人は今年の住民税に住宅ローン控除が反映されているはずです。金額が例年と大きく変わっていれば、住宅ローン控除の恩恵を受けているのが分かると思います。