住宅ローンを完済したらー抵当権抹消登記ー

不動産コラム

何年か先のことになりますが、住宅ローンを完済したら忘れてはならない手続きがあります。
それは「抵当権の抹消」です。

借入をする際に必ず登記される「抵当権」ですが、これは銀行が必ず貸し出しの条件としている手続きです。「抵当権」とは、万が一返済が滞り、返済不能と判断された場合には担保にしている不動産を差し押さえられてしまう非常に強い権利です。
抵当権は住宅ローンの返済が行われている期間だけ効力を発揮します。銀行は完済された債務について、何らかの保全措置を取る必要がないからです。
完済してから何もアクションを起こさなくても銀行から何かを言われることはありませんし、実質的にローンは終了しているので日常生活に支障もありません。

ですが、登記簿謄本には住宅ローンを借入した時の「抵当権」が記載されたままとなっています。
登記簿からこの抵当権を外す手続きを「抵当権抹消登記」と言います。
土地や建物、マンションなど担保として差し入れている不動産から「抵当権」が外れて、ようやく何も権利が登記されていない綺麗な状態に戻ります。
「抵当権」が抹消されて始めて、本当の意味でのマイホームになるのです。

住宅ローンが終わるシチュエーション

長い間支払ってきた住宅ローンが、ついに終了するシチュエーションとしては

①残債がゼロになる回(最終回)の支払いが完了した(一括返済を含む)
②団体信用生命保険が下りて、残債が全て弁済された

この2つのパターンが考えられます。
いずれも銀行に対する債務が終了したことになりますが、いわば銀行とあなたの「債権者と債務者」という関係が終わったという事になります。
これ以上、あなたの銀行口座から返済のためのお金が引き落とされることはありません。
すべての返済が終わると、銀行からある書類が送られてきます。
住宅ローンを借りる時に記名捺印した「金銭消費貸借契約書」、さらに抵当権を抹消するために必要な書類が同封されているはずです。

手続きは誰に頼む?

さて、当該の住宅ローンを借入した時には、抵当権を設定するための登記を行いました。不動産の名義をあなたにするための所有権保存登記など、いくつかの登記手続きは専門家である司法書士が行います。
購入したりお金を借りる際にはミスがあってはならないので、司法書士へ依頼し「登記費用」という形でお金を支払います。
では住宅ローンが終わって、「抵当権を抹消」する際にも司法書士へ依頼しなくてはいけないでしょうか。
答えはNOです。
実は、抵当権抹消登記は私たち資格のない素人でも、手続きを行うことが可能です。
銀行から送られてきた書類と、その他必要な書類を揃え、登録免許税を収入印紙で収めればOKなのです。抵当権設定時には何万円もかかっていたこの登録免許税が、抹消登記の際には1件につき1,000円しかかかりません。通常の一戸建であれば土地と建物で2,000円で済みます。
また「登記申請書」という専門的な書類を作成しなくてはならないのですが、インターネット上に基本的なフォーマットが無料で掲載されていますので、これを自分用にアレンジすれば簡単に作成できます。
一通り書類が揃ったら、不動産の住所地を管轄している法務局へ申請します。書類の書き方などを窓口で見てもらい、もしも間違いなどがあれば修正して出し直せば大丈夫です。
実は筆者も過去に「抵当権抹消登記」を自分で行ったことがありますが、一度出向いただけで無事に受理されました。
もちろん、司法書士へお願いして抹消登記しても構いません。その場合は、当然ながら司法書士への報酬が必要となりますので、多少の出費は覚悟しなくてはなりません。
無事に抵当権抹消登記が完了すると、登記簿謄本には新たに抹消登記が申請された事実が載り、これまで記載されていた抵当権の欄には「下線」が引かれています。

なおこの抵当権抹消登記は、いつまでに行わないといけないという期限はありません。
ただし前述した通り、たとえ住宅ローンの返済が終わっていたとしても何もしなければ「登記簿謄本」には抵当権が登記されたままとなっています。

②の団体信用生命保険で弁済された場合、債務者が死亡したケースでは相続も発生することになります。
相続人にとって「抵当権」は余計な権利でしかないので、相続登記を行う際に同時に手続きをするケースが殆どです。
他にも、あなたがその不動産を売却しようとする際には、抵当権は邪魔な権利なので抹消しておかなければなりません。買主が新たに住宅ローンを借入する場合、改めて抵当権を登記するからです。(売却したお金で住宅ローンを完済する場合は、決済の日にまとめて申請することになります。)
いつでも出来る手続きではありますが、完済した折には遅滞なく行っておくと後々不便がありません。

ちなみに②の団信で弁済されたケース。筆者の体験談ですが、こちらから銀行へ連絡しないと抵当権抹消に必要な書類を送ってくれなかったという事がありました。
住宅ローンの返済そのものは保険で終わったので安心ですが、もしも「抵当権抹消登記」について知識が無かったとしたら・・・相続や売却など、事が起こって始めて知ることになっていたかもしれません。
住宅ローンの種類や銀行によって対応が違うようですので、予備知識として是非知っておいていただきたいお話です。