固定金利が上昇中?これからの住宅ローン金利選びで知っておくべきポイントとは

不動産コラム

最近、住宅ローンの固定金利が上がっているという話をよく聞きます。実際に2022年3月の大手都銀の10年固定の基準金利は、三菱UFJ銀行が年3.54%、三井住友銀行が3.55%、みずほ銀行が2.95%に引き上げられています。背景には欧米の金利緩和縮小の動きがあるようです。固定金利が上がり始めると、その後で変動金利も上がるのでは?という不安もあります。世界情勢が不安定な昨今、これから住宅ローンを借りる人、借り換えを考えている人にとっては悩ましいところです。今一度、固定金利と変動金利の特徴、リスクなどのポイントをまとめてみましょう。

固定金利と変動金利では基準となる指標が違う

固定と変動、この2つの金利は何を基準にして決められているのでしょうか。各銀行の数字を見てみると、何となく足並みが揃っているように見えます。

まず住宅ローンの固定金利は、国債市場で取引される「10年国債」の利回りを参考にして決められています。国債利回りは投資家の動きに左右されていて、「将来を予測したもの」という位置付けです。フラット35 の固定金利(全期間)はまさにこの10年国債を元に毎月の金利が決まっているので、金利推移グラフを見比べると非常に良く似た動きをしています。

ちなみに、国債市場は株価市場と連動しています。投資家のお金が株と国債、どちらへ流れるかということなのです。景気が良い時は株が買われて価格が上昇しますが、その場面では国債価格は下落し利回りは上がります。逆に景気が悪化し株価が下落すると、安全資産である国債が買われ国債価格が上昇、利回りは低下するのです。

一方、住宅ローンの変動金利は、短期プライムレートを参考に決められています。短期プライムレートは日本銀行が優良企業に対して融資を行う際の優遇金利で、日銀の政策金利にほぼ連動しています。日銀は日本経済の実態を見て金利を決定しているので、変動金利は「現在の景気」に影響されていると言えます。

よく「先に固定金利が上昇し、後から遅れて変動金利が上がる」と言われますが、これは二つの金利が「現在」「将来」どの市場の影響を受けているかによるものだったのです。結果、変動金利が上がり始めた時には、すでに固定金利は上昇済みと考えられるので、その時点で変動金利から固定金利へ借り換えをするのは手遅れ・・・となってしまうのです。

固定金利のメリット・デメリット

固定金利は一度金利が決定してしまうと、一定期間もしくは全期間金利の上昇はありません。世の中の経済情勢に影響されることなく、返済金額が変わらないのが一番のメリットです。金額が変わらないということは返済計画が立てやすくなるので、将来にわたって家計の収支計画も立てやすくなります。一方、デメリットはどうしても変動金利に比べて金利が高いことです。今のような低金利時代が続けば、総返済金額は多くなってしまいます。

変動金利のメリット・デメリット

変動金利の一番のメリットは、固定金利に比べて断然金利が安いことです。各銀行、店頭金利から優遇した後は0.3~0.4%台という超低金利となっています。このまま完済するまで金利上昇がなければ良いのですが、先行きが不安定な現在、金利上昇する可能性は十分に考えられます。0.5%~1%金利が上昇した場合にどうなるかシミュレーションした上で、返済可能かを判断しましょう。

また、住宅ローンの変動金利には急激な金利上昇をした場合に対応するため「125%」「5年間返済額据え置き」ルールが存在します。(まれにこのルールがない銀行があるので注意しましょう。)

変動金利は年2回(4月と10月)に見直しされるケースがほとんどですが、返済額そのものは5年間固定されます。もしも金利が上下すると、毎月の固定された返済額の中で内訳である元金と利息の割合が変わるのです。6年目に返済額の見直しをした際、金利が上昇していれば返済額も上がります。しかしこれまでの返済額の125%以内に留めるというブレーキがかかります。1.25倍以上の返済額にはならないのです。返済額10万円であれば、12万5千円が上限となります。2万5千円の上乗せでもかなりきついですが、もしもこのブレーキがなければ非常に怖いことになります。

さらに金利上昇が激しい場合、未払い利息が発生してしまいます。未払い利息とは、本来支払われるべき利息が返済額を上回ってしまった時に、その上回った利息部分を指します。こうなってしまうと、毎月支払っても元金は減りません。そのため、完済予定時になってもまだ支払うべきものが残っていることになります。その場合は原則、全額一括返済しなくてはなりません。

低金利で返済が楽だからと変動金利を選ぶ人が多いですが、こうしたリスクがあることを十分に理解した上で利用しましょう。

ミックス返済でリスク分散

固定金利と変動金利の2本立てで住宅ローンを借りる、「ミックス返済」という方法があります。利用できる金融機関は限られていますので確認が必要になりますが、とにかくリスク分散したい!という方にはおすすめです。例えば半分ずつ固定と変動に分けて借入すれば、金利が上昇した場合に返済額の上昇や未払い利息発生のリスクが半減します。ただし、住宅ローンが2本となるため、事務手続きや諸費用が多くなってしまいます。

残念ながら、将来の金利予測は誰にも分からないというのが現状です。住宅ローンは支払い終えないと損得は計りかねます。大切なのは、余裕を持った支払い計画とローン破綻しないための備えです。無理のない資金計画でマイホームを守りましょう。