独立して起業した人が住宅ローン借入で注意するポイントとは

不動産コラム

住宅ローンを借りようとする際には、「自営業の人は難しい」という話をよく聞きます。自営業をしている方の中には、家業を継ぐ、資格を生かして独立するなど様々な理由で、会社員を辞めて起業するケースもあります。今回は、キャリアの途中で自営業に転向した方が住宅ローンを借りる際の注意点をお話しします。

金融機関が重視する審査ポイント

職業が会社員・自営業に関わらず金融機関が審査において重要視するポイントは、一言で言うなら「貸したお金をきちんと返済してくれるか」です。何千万円という高額な金額を35年という長期に渡って貸し付けるので、その人の「収入が安定しているか」と「その収入が継続的か」というポイントが審査結果を左右します。

会社員も就職したての若い人や、転職したばかりで勤務年数が浅い場合には、住宅ローンが借りにくいことがあります。自営業の場合も同様に「事業を継続して何年経過しているか」という「業歴」が大きなポイントとなります。しかも一定の給与を受け取れる会社員と違い、事業の内容がダイレクトに収入を左右する自営業では毎年の収入のアップダウンが激しい場合があります。金融機関は「良い年もあれば悪い年もある」という状態を一番嫌います。特に直近3年間で「赤字」を出している年が1年でもあると、非常に厳しくなります。

最低3期分の資料が必要

都市銀行やネット銀行などでは、自営業の方の取り扱いは「最低3期業歴があること」としているケースが多いようです。つまり独立して(事業を開始して)3年経過している、確定申告を3年提出していることが必須条件となります。

(中には2期分で審査してくれる金融機関もあります。)事前審査の段階で「確定申告書3期分」が提出できないと受付すらしてくれないという銀行もありますので、事前に確認しましょう。

次に自営業者が注意しなくてはならないのが「所得金額」です。会社員が「税込みの給与収入」で審査されるのと違い、自営業者は「所得金額」で審査されます。確定申告書の中で、まずは売上である「収入」金額を記入する欄がありますが、その下の「所得金額」の欄にある金額を年収として判断します。自営業の方は売り上げが好調だった年でも、節税のために経費をまんべんなく計上して所得金額を減らす努力をするのが普通です。売り上げがいくら1000万円以上あっても、所得金額を500万円にしていたら年収は500万円になります。

また会社員の場合には転職したばかりでも数か月分の給与明細書を提出すれば「割り戻し計算」で年収を予測して審査をしてくれますが、自営業の場合には「割り戻し計算」が適用されません。

さらに「決算書」がある場合には提出を求められます。決算書を見れば事業の好調不調が一目でわかるからです。ここで赤字を出していないことも重要ポイントです。確定申告や決算書の作成は税理士さんにお任せしている方も多いですが、節税が目的になっている場合と住宅ローンを借り入れしたい場合では事情が変わってきます。

マイホーム購入計画がある場合には、黒字経営を維持すること、住宅ローンで借入したい金額をカバーできる所得金額で確定申告することを3年継続しましょう。

独立して間もない人が住宅ローンの審査に通った実例

Aさんはこれまで会社員として勤務していましたが、1年半前に独立し確定申告を2回提出済みでした。子どもの小学校入学前にマイホーム購入を決断し、複数の銀行に事前審査を申請しました。

都市銀行、ネット銀行、地方銀行とまんべんなく申込をしましたが、都市銀行とネット銀行では「業歴が1年半で3年という基準を満たしていない」という理由で審査のテーブルに乗らず、取り下げとなりました。
結果、審査を通過したのは地方銀行1行のみでした。

審査してくれた地方銀行では、

  • サラリーマン時代の年収に引けを取らない「所得金額」を申告していること。
  • 自己資金を2割以上用意していること。
  • これまでの職歴を生かした独立であった

これらのポイントを大きく評価し、満額の融資承認を得ることが出来たそうです。ちなみに今回審査を受け付けてもらえなかった銀行も、この状態を継続して業歴が3年になれば問題なく審査できるとのことでした。

「業歴」「年収」「自己資金」の3つが揃えば、独立した人でも住宅ローンは通すことができると言えます。

「フラット35」を活用しよう

民間金融機関には厳しい規定がありますが、フラット35は独立した方でも借りやすい住宅ローンです。業歴が長いに越したことはありませんが、フラット35では「確定申告を1回」経ていれば申し込み可能なのです。

例えば企業したのが前年の9月1日の場合、12月末までの4か月しか業歴がないことになります。上記で自営業の方は割り戻し計算してもらえないとお伝えしましたが、フラット35では下記のような計算をしてくれます。

翌年の確定申告書で150万円の所得金額を上げていた場合

1,500,000円÷122日(9月から12月までの日数)×365日=4,487,704円

約448万円を年収として審査可能となります。また返済負担率が年収400万円未満だと30%、400万円以上だと35%という区分になるので、このケースでは4,050万円の借入申し込みが出来るという計算になります。

フラット35は全期間固定金利なので、最終回までの返済金額を事前に知っておけるのもメリットです。

これから独立を考えている方、独立して間もない方は、これらのポイントに留意しながら「計画的に」マイホームを購入してください。