育児休暇中の人は使いやすくなった!フラット35の新審査基準

不動産コラム

転職したばかりの人や自営業の方には使いやすいと言われる「フラット35」。金利情勢が不透明な昨今、全期間固定金利(融資実行月の金利が全期間固定されます)で安心な点も人気の理由です。2023年10月より審査基準や提出書類が一部変更になったので、解説していきます。

育児休暇中の方の復職条件

まずは、育児休暇中の人の申し込みについてです。これまで、育児休暇を取得している人は、融資実行時に復職していることが必須とされていました。申込時には「現在育児休暇を取得中であることを証明する書類」を提出し、さらに融資実行前には復職していることを明確にするための「復職証明書」の提出が義務付けられていました。また、どうしても復職が困難な場合には、返済金額がしっかり貯蓄してある原資を証明する方法(預金通帳などの写しを提出)で救済措置が取られていました。つまり育児休暇中に申し込みをした人は、予定通り復職しているか、予定より少し遅れて復職するが返済に懸念はないことをきちんと証明しなければならなかったのです。

しかし10月以降はこの「復職条件」がなくなり、育児休暇の途中でも融資実行が可能になりました。当然、「復職証明書」や「返済原資を証明する資料」の提出も不要となります。

これは子育て中の世帯にはうれしいポイントですね。これまで夫婦で収入合算や連帯債務で借入をしたい場合、出産や育児のスケジュールによっては購入可能な物件が限られるケースがありました。今後は入居時期(=融資実行月)を考慮しなくて済むようになるため、物件選びの選択肢が広がることになります。

ただし、復職条件を考慮されないのは会社員や公務員などで、同一の勤務先に復職する方に限られます。申込時の勤務先を退職し、新たに就職する場合には「復職」とは見なされません。また、復職条件が撤廃されたとしても融資が実行されれば返済は予定通りスタートします。決して返済が猶予されるわけではないので要注意です。最初から延滞や返済不能に陥るようなことがあっては元も子もありません。収入のバランスや貯蓄の有無をしっかり考慮して、安易な選択はしないようにしましょう。

「携帯電話の機種代金」の取り扱い

住宅ローンの審査ではフラット35に限らず、「その他の借入」があるとその返済金額を返済負担率に加えて計算します。これまで「携帯電話の機種代金」を分割払いしている場合には、月々の返済額を申告することとなっていました。携帯電話を新規に購入あるいは機種変更する際には、手続きの中で「割賦払い」の審査を受けているのですが、あまり覚えていない人がほとんどです。さらに携帯電話の機種代は各携帯電話会社の様々な割引と相殺されてしまうため、余計に「ローンを組んでいる」ことの認識が低くなってしまい問題となっていました。

家族全員分の携帯機種代を申込人名義で返済している場合には、毎月数万円の負担となるケースがあります。返済負担率ぎりぎりまで借入を希望している人は、機種代金を含めるか含めないかで非常に審査に影響することがありました。予想外に否決や減額といった審査結果となってしまうこともあったのです。

しかし10月からは、この「携帯電話の機種代金」が「その他の返済」から除外されることになりました。携帯電話の普及により、一人1台所有することが当たり前の時代となったことも大きいのでしょうか。携帯電話代にかかる支出は、毎月当たり前の項目となっているからかもしれません。

ただ審査に影響しなくなったとしても、機種代金を分割払いしている場合には「割賦払い」=「ローンがある」という事実を忘れてはいけません。毎月の携帯電話代の支払いが遅れた場合には立派な延滞となります。個人信用情報に延滞の事実が記録されること、その事実が住宅ローンの審査に影響することはこれまで以上に認識しておきましょう。

実印押印欄の撤廃

今後は借入申込書と団体信用生命保険の告知書の「実印」押印欄がなくなります。手続き時に印鑑を忘れても大丈夫です。これまで複写の用紙にたくさん押印欄があり、印鑑の押し忘れや印影の不明確さなどで書類が差し戻しとなるケースが多々ありました。審査に余計な時間がかかってしまうことがありましたが、記入のみで済むようになったので審査がスピーディに進むようになります。

今回審査基準が緩和されたことでより利用しやすくなりましたが、収支バランスは余裕を持って、ぎりぎりの資金計画は避けましょう。