投資用不動産で節税できる?−向いている人そうでない人−

不動産コラム

投資用不動産を購入し、賃貸に出すことで「不動産所得税」を得ることが可能になります。いわゆる「投資用不動産」と呼ばれるものです。一人暮らし用のワンルームから複数の住戸があるアパー1棟まで様々な形態がありますが、投資用不動産を持つ目的としてよく聞かれるのが「節税」です。ただし、投資用不動産を持っていても上手く節税できる人とそうでない人がいます。今回はサラリーマンが投資用不動産で節税できるポイントについてお話します。

不動産投資で節税できる仕組み

投資用不動産を持っていると、どんな税金が節約できるのか?それは「所得税」と「住民税」です。その理由は、「減価償却」で作った会計上の赤字を「損益通算」して所得を圧縮することができるからです。これは裏のテクニックやごまかしではなく、税務上きちんと認められている節税方法なので利用しない手はありません。

ところで「減価償却」という言葉は聞いたことがあるけれど、どういう意味なのかよく分からないという人もいるでしょう。「減価償却」とは、固定資産の購入費用を使用可能期間にわたって、分割して費用計上する会計処理です。購入した年に全てを経費にするのではなく、何年かにわたって分割して経費にしていくのです。この減価償却費は実際には出ていかないお金を経費としてカウントできると言うところに大きなポイントがあります。

不動産の場合ももちろん減価償却できる資産になりますが、あくまで対象となるのは建物と建物付属設備のみ。土地は月日が経過しても価値が減っていくものではないため除外して考えます。

また、注意しなくてはならないのは建物の構造によって償却期間が決められている点です。これを「法定耐用年数」と言います。

  • 木造・・・22年
  • 軽量鉄骨・・・27年
  • 重量鉄骨・・・34年
  • 鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート・・・47年

もし上記の耐用年数を超えてしまった中古物件の場合も「法定耐用年数×20%」で計算できるので、減価償却が認められます。

「損益通算」とは?

ではどのように計算して節税するのか、具体例で見てみましょう。

例えば年収1200万円の会社員が1億円のマンション(建物価格5000万円、利回り8.5%、耐用年数5年)を購入した場合。まず原価償却費は5000万円÷5年=1000万円(年間)となります。

  • 年間家賃収入・・・850万円
  • 諸経費(管理費や固定資産税など)・・・▲200万円
  • ③住宅ローン返済(元本部分)・・・▲400万円
  • ④住宅ローン返済(金利部分)・・・▲200万円
  • 実際の手残り・・・50万円
  • ⑤減価償却費・・・▲1000万円

③の住宅ローンの元本部分は経費として計上できないので、
「年間家賃収入」「諸経費」「住宅ローン返済(金利分)」「減価償却費」を合計すると▲550万円となります。実際には50万円の黒字ですが、会計上の赤字が550万円発生していることになります。

元々の年収が1200万円ですが会計上は▲550万円、つまり年収650万円と見なされます。これが「損益通算」です。この年は年収650万円として所得税と住民税を計算する形となりますので、実際の年収1200万円で納税する金額より抑えられ、節税となるわけです。

節税効果が高い人とは

このように投資用不動産を持って節税できることがわかりましたが、誰でも同じ効果が得られるかというと実は違います。それは、年収によって所得税・住民税の税率が違うからです。

課税所得金額が899万9000円までは段階的に5%~23%ですが、課税所得金額が900万円を超えると33%に上昇します。つまり、課税所得金額が900万円を超える人であれば不動産投資で節税できる効果が大きくなるのです。ここで言う課税所得金額は税込年収とは異なりますが、課税所得900万円は大体年収1200万円くらいの計算となります。

ですから「節税」が目的の場合は、課税所得金額を一つの目安にする必要があります。

投資用ローンと居住用住宅ローン

最近では、若い人でも投資用マンションをローンを組んで購入している人が増えてきました。ところが、その後で自身が住む用のマンションを購入するのにさらに住宅ローンを組みたいと審査をかけたところ上手くいかないケースも見受けられます。

「赤字を出さずにきちんと収益が出ているのに・・・」と困惑されるのですが、銀行にとってはたとえ黒字であっても投資用ローンも借金と見なすケースがほとんどです。投資用と今回の住宅ローン、ダブルで返済負担率を計算し、範囲内に収まっているかを審査します。収益があれば不動産所得として年収を上積みすることもできますし、それ以上に年収がしっかりある場合には余裕がありますが、投資用ローンで限度枠ギリギリだったりすると自身のマンション購入時に支障が出ます。投資用不動産をローンで購入する際には、将来の持ち家計画も併せて考えましょう。