突然の転勤!住宅ローン返済中にマイホームを賃貸に出したらどうなる?

不動産コラム

マンションを買う時に、『もしかしたらいつか転勤になるかも。でもその時は売却するか賃貸に出せばいいか』と考えて決断する人も多いでしょう。確かに、転勤になって住めなくなった場合には、①売却する②賃貸に出す③単身赴任する④空き家にする という選択肢があります。しかし、もしも住宅ローン返済中だった場合には注意しなくてはならない事があります。

特に『賃貸に出す』場合、簡単に考えていると最悪自己破産にもなりかねない事態となってしまいます。

住宅ローンの契約違反

住宅ローンの大きな特徴は、『自分自身が住むためのマイホームを購入する際、超長期間、低金利で借入れすることが出来る』ことです。この点に関しては、申込みをする時点と借入の契約をした時点で要件を満たしていたはずですし、順調に返済も進んでいたでしょう。そんな時に突然転勤となって、そのマイホームから転居せざるを得なくなると、その時点で住宅ローンの契約要件から外れてしまいます。そのまま利用することは、もはや契約違反となってしまうのです。

契約書の条文例

実際に金銭消費貸借契約の中の条文は、どうなっているのでしょうか。とある金融機関のものをご紹介します。

○条(融資対象物件の使途の変更)

借主は、この契約により借り受けた金銭で購入した物件について、借入後に賃貸物件として使用する等使途を変更する、または物件を譲渡する場合には、当行に対して届出を行うものとします。また、借主は、当行への届出に伴い、当行が指定する他の融資商品へ切替えを直ちに行うも のとします。なお、借主は、他の融資商品への切替えにより、次の事項について変更となることを承諾します。

  • 1 適用する金利が変更となること
  • 2 借主が加入するこの契約に付帯する団体信用生命保険が適用の
  • 対象外となること
  • 3 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書が発行されなくなること

この金融機関の場合、万が一賃貸に出した場合には、『他の融資商品への切替』を必須としています。つまり、一般の住宅ローンからアパートローンや投資用ローンへの借換えをしなくてはならないのです。前述したとおり、本来の借入れ目的にそぐわないため、賃貸目的のローンへ変更となります。

そうなると当然ながらこれまでの低金利とはいかず、返済金額は増額してしまいます。(現状2%前後)

また、自身が住んでいない住宅になるので『住宅ローン控除』の対象外となり、残りの期間の控除は打ち切られることになります。

勝手に賃貸に出しても大丈夫?

『いちいち調べに来るわけでもないし、黙って賃貸に出していてもバレないのでは?』そう考える人も多いでしょう。実際、上記のように契約書に明記されている事を知らず、賃貸に出してしまった人もいます。その結果、突然金融機関から一括返済の請求をされてしまい、大変なことになってしまうケースがあります。

あなたがその物件に住んでいない事を、金融機関はどうして把握するのでしょうか。発覚してしまう多くの原因は、郵便物がきちんと届かず戻ってくることにあります。例えば、変動金利を利用していた場合、半年に一度の金利見直しに合わせて返済予定表が送られてきます。また、当初10年間(13年もあり)は、年末が近づくと『年末残高証明書』も送られて来ます。

大事なのは、勝手に賃貸に出すのではなく『まず金融機関に相談する、届出する』ことです。金融機関が知らないうちに賃貸していたことが発覚した場合には、容赦なく一括返済の手続きが取られてしまうと思いましょう。

例えば転勤の期間が、2年、3年といった短期で限定的であった場合、金融機関によっては相談に乗ってくれるところもあるかも知れません。

単身赴任の場合

借入れ本人だけが単身赴任し、家族がそのまますみ続けるならば、住宅ローンも引き続き利用できることになっています。

ただし、住宅ローン契約本人が海外赴任する場合には住宅ローン控除は受けられません。海外赴任の期間中は、そもそも日本国内で税金を払っていないため還付する財源がないからです。

とにかく、まず相談!

住宅ローンは契約です。故意か否かに関わらず、規定に反することをするとそれなりの責任を負います。一括返済の代償は非常に大きく、最悪マイホームを手放せざるを得なくなり、自己破産などの結果を招くこともあります。住宅ローン返済中に転勤になった場合は、とにかくまず金融機関に相談しましょう。