繰上返済のしくみー早くお得に完済する方法ー

不動産コラム

住宅ローンは最長で35年返済という借入です。いくら低金利時代といっても、総返済額を見れば借入した額よりはるかに多い金額を支払うことは一目瞭然です。加えて、多くの住宅ローンが完済年齢が80歳という規定で、若い人でも「定年後にも支払いが残る」状況を作り出しています。

そんな時に「繰上返済をすれば、早く終わりますよ。」とか「皆さん繰上返済していくので、35年キッチリ払う人はいませんよ。」などと言われたことはありませんか?

今回はこの「繰上返済」の仕組みと、何がお得なのかをお話します。

繰り上げるのは「元金」部分

元利金等返済であれば毎月の返済額は一定です。

分かりやすく全期間固定型のフラット35で3,000万円を金利1.27%(フラットS利用で5年間0.5%優遇あり)で借入れした場合

当初5年間   85,386円

6年目以降   88,088円

という返済額となります。

この毎月の返済額は「元金+利息(金利)」という内訳になっているのですが、元利金等返済の場合、「初期の頃は利息が多い」のはよく知られています。細かく言えば、毎回この「元金+利息」の内訳は円単位で変わっており、回を重ねるごとに利息が減少し、元金が増加しています。

住宅ローンがスタートすると必ず銀行から「返済明細表」という書類が送られて来るのですが、これを見れば毎回の返済額の内訳と残高がズラーっと並んでいて、どの時点でいくらローンが残っているかが分かります。(フラット35の場合は固定金利のため、35年間420回分の明細が一気に送られてきます。)

上記のケースのスタート時は

回数       元金       利息         返済額        元金残高

1回目   59,136    26,250     85,386       29,940,864

2回目   59,188    26,198     85,386       29,881,676

3回目   59,240    26,146     85,386       29,822,436

4回目   59,292    26,094     85,386       29,763,144

5回目   59,344    26,042     85,386       29,703,800

60回目  62,268       23,118       85,386          26,358,642

といった具合です。

元金残高の欄を見ると、当然ながら毎月返済している「元金」の金額分が減っていることが分かります。けっして85,386円ずつ減っている訳ではないのです。

繰上返済は途中である程度まとまった金額を支払う訳ですが、文字通り繰上げて返済されるのは「元金」部分になります。例えば100万円繰上返済するというのは、100万円分の元金を先回りして返済する(減らす)ということになるのです。

それはつまり、返済明細表の元金残高が100万円少なくなった回へジャンプするということです。元金残高が一気に減ると、そのジャンプした返済期間で予定されていた「利息」を支払わなくて済むのです。繰上返済で手にすることが出来るお得は、正にココなのです!!

そして残りの支払い回数はジャンプした回数分減ることになるので、総返済420回(35年)ではなくなり、最終回が予定よりも早くなるという訳です。

このように繰上返済を行えば余分な利息がカット出来るので、総返済額が予定よりも安くなります。そして何よりも予定より早く完済することで、定年後まで支払いが続く予定だったものが定年までに終えることも出来るのです。

繰上返済には2つの種類がある

今ご紹介した繰上返済の方法は「期間短縮型」と言って、支払額を変えずに期間を短くするタイプですが、実はもう一つ方法があります。

それは「返済額軽減型」です。こちらは、残りの期間はそのままで毎月の返済額を引き下げて安くする方法です。

同じように100万円を繰上返済してこの二つの方法を比較すると、利息軽減効果は「期間短縮型」の方が大きくなります。

しかしながら、毎月の支出が減ると「安くなった実感」は大きいので、子供の教育費が掛かる時期などには効果的と言えます。

住宅ローンの種類によっては「返済額軽減型」がなく、「期間短縮型」しか選べない場合がありますので注意しましょう。また、手数料や繰上返済できる最低金額なども銀行によって違いますが、インターネットを利用して行うと手数料が0円のケースが多いようです。

なお、繰上返済はあくまで「余剰金」で行うべきものです。繰上返済のために生活を切り詰めるようでは本末転倒です。

将来計画的に繰上返済を行い、お得に早く完済するためにも、ギリギリまで借入をするのはやめた方が良いと言えます。