分譲マンションの管理が変化「第三者管理方式」とは?メリット・デメリットを解説

不動産コラム

分譲マンションでは必ず「管理組合」が設立され、管理を行うのが一般的です。通常は、事務管理業務、清掃業務、建物・設備管理業務、緊急対応業務などを管理会社に委託し、その分の管理費を支払う仕組みになっています。あくまでも管理の主役は区分所有者なのですが、最近では管理会社などの外部の第三者が管理者となる「第三者管理方式」を採用する物件が増えています。これは、区分所有者や居住者の高齢化が徐々に進んできたこと、理事会の役員のなり手が不足していることなどが影響しています。

今回はマンションの新しい管理形式「第三者管理方式」について解説します。

「第三者管理方式」が受け入れられた理由

分譲マンションは、区分所有者や入居者が主体となって管理組合の運営を行います。共同住宅という性質上、みんなで自分達の資産を維持管理する必要があり、住民自治に頼る部分が大きいのが現実です。国土交通省が作成している「標準管理規約」でも、区分所有者による管理組合の設立と理事会による運営が大前提となっています。しかし時代の流れと共に、住民自治に頼った管理組合運営が行き詰まりを迎えている部分があります。

理由の一つは区分所有者・入居者自身が高齢化したことで、役員のなり手不足に陥っていること。さらに働き盛りの世帯では、理事会の活動に貴重な休日を奪われてしまうことが大きな重荷になります。加えて、管理について無関心な層も増加傾向にあると言われています。

管理組合の理事会活動はボランティアとなるので、たとえ多少の費用がかかるとしても、外部の専門家に任せたいという声が多くあったのです。

また、インバウンドや不動産投資が活発になり、分譲マンションの賃貸化が進んでいます。オーナー本人が居住していない場合は、役員に就任することはほとんどありません。外国人のオーナーが多い物件では、管理費・修繕積立金の滞納が大きな問題になるケースもあります。

「第三者管理方式」には3つの方式がある

いくら管理に関心がないといっても、管理全てを丸投げするわけではあません。第三者管理方式には次の3つの方式があります。

第三者が理事会の一員となり運営を行う方式

これまで通り区分所有者の中から役員を選出し理事会を維持しますが、その中に管理会社の社員などの専門家が加わります。理事長、副理事長、理事または監事などの役員の一部を第三者が担います。

客観的視点が取り入れられるため、重要議題を話し合う際には有効です。ただし、区分所有者の負担が極端に軽減されるわけではありません。

第三者運営で理事会が監視を行う方式

①と同様理事会は維持されますが、「理事長」に管理会社の社員などの専門家が就任します。理事会は

監査としてチェックする立場となります。チェックする側はこれまで通り区分所有者の役員が担当、もしくはさらにチェックも外部の専門家に依頼する方法があります。

第三者運営で理事会はなく総会が監視を行う方式

外部の専門家が管理者となり、理事会そのものが廃止されます。区分所有者から役員を選出する必要がなくなるため、負担が一気に軽減されます。しかし管理に一切関わらなくなるのではなく、「総会」が外部専門家運営を監視(チェック)します。引き続き「総会」は区分所有者全員の意思表示の場であり、最高意思決定機関の役割を持っていることに変わりはありません。

第三者管理方式のメリット

  • 負担の軽減

第三者管理方式を取り入れることの最大のメリットは、区分所有者の負担が軽減されることです。分譲マンションで暮らすこと=管理組合の理事会役員が回ってくる宿命があります。輪番制を取り入れている管理組合は多いですが、共働きや様々な理由で引き受けられず、心理的な負担が大きいのも事実です。また、管理組合自体も、役員の選出に苦労している現実があります。

  • 管理内容の適正化

管理の専門家が管理組合の一員となることで、管理内容の適正化が期待できます。プロの目線が加わることで大規模修繕工事なども、適正な予算組みや計画立案が可能となります。素人が話し合うよりも、効率的に進めることができます。

また普段の管理体制も、より整うことが期待されます。問題が起きた時にも迅速に対応できるので、トラブルを未然に防ぐ、またトラブルに発展しても拡大を抑えることができます。

第三者管理方式のデメリット

一方で、第三者管理方式にはデメリットもあります。

①費用負担の増加

第三者の専門家を委託するわけですから、当然のことながら費用の負担が発生します。ダイレクトに管理費が上昇することになるので、区分所有者の金銭的な負担は増加します。

②運営のノウハウが蓄積しない

実際に区分所有者が役員となって管理組合を運営すると、経験や知識が蓄積されます。主体的にマンション管理に関わることで、資産価値を維持する意識やマンションへの関心そのものも向上していました。

しかし第三者管理方式では業務全般を第三者の専門家に委ねるので、こうした機会が奪われ、住民の管理に対する意識が薄れてしまうことが懸念されます。

③利益相反の危険性

実際には管理会社が第三者管理も同時に請け負うケースが多く、こうした場合は利益相反が生じないかを厳しくチェックする必要があります。一番わかりやすいのが大規模修繕工事の時です。入居者よりも管理会社の利益を優先する可能性がないか、不要な工事を発注してマージンなどを受け取っていないか、などをきちんと監視しなくてはなりません。

今後増加すると思われる「第三者管理方式」ですが、区分所有者がまったく管理に関わらなくなるわけではありません。負担軽減を図りながらも、より一層チェック体制を強化し、自分たちのマンションの資産価値維持について関心を高める必要があります。