マンション防災の基本−災害から命を守るポイントを知ろう−

不動産コラム

阪神淡路大震災から27年、マンションを選ぶ時に耐震性をチェックする人が非常に多くなりました。1981年(昭和56年)6月以降に建築確認を受けたマンションは、いわゆる「新耐震基準」に適合しているために地震に強いと言うことができ、中古マンションを選ぶときの一つの目安にもなっています。しかし、基礎や針などの主要構造部に被害はなかったとしても生活に必要な設備が全て無傷とは限りません。また、最近では毎年のように発生している水害にも備える必要があります。今回は災害時におけるマンション特有の被害と対策、防災のコツについてお話します。

マンション特有の被害とは

新耐震基準は「震度6以上の地震が発生した時、居住者が命を失うような倒壊を起こさないこと」を目標としています。建物に全く被害が発生しないとは限りません。地震と水害によって起こりうるマンション特有の被害を考えてみましょう。

①停電の影響

停電してしまうと、エレベーターやエントランスのオートロック機能が使えなくなります。日常の生活に欠かせない設備も使用できなくなり、給水を電動ポンプで行なっている場合は断水します。

②共用部分の破損

激しい揺れがあると、玄関のドア枠の変形、窓ガラスの破損が発生します。また、雨水の侵入がある場合、鉄骨が錆びていて共用廊下やバルコニーが崩落する被害も起こっています。

③給排水設備の破損

地震によって、建物内部を通る配管や受水槽が破損すると、断水したり排水できなくなったりしてマンション内での生活が困難になります

④台風による被害

マンションであっても低層階住戸では浸水の可能性があります。地下に機械室があると水没して停電が長期化する恐れがあります。地下駐車場がある場合にも、車が被害を受けます。

各世帯で出来る防災対策

これまでは災害=避難所へ避難して暮らすことが前提とされ、非常用持ち出し袋の用意が推奨されてきました。しかし、都市部では避難所が定員オーバーになることも予想されます。避難所ではプライバシー確保が難しく、感染症のリスクが高くなったり、共同生活のため様々なルールがありストレスが増加します。

一方、耐震性が高いマンションでは十分な安全が確保される場合には、自宅で避難生活を送ることができます。住み慣れたマンションで生活を続けられるメリットは大きく、近年ではこの「在宅避難」が出来るよう、備品の準備と事前に環境を整えることが重要視されています。

①室内の地震対策

いくら建物が頑丈でも、室内の家具の転倒や落下で命の危険にさらされることもあります。寝室の家具配置はレイアウトを工夫しましょう。寝ている上へ倒れてこないか、家具の背面が壁に接しているか、倒れてドアや逃げ道を塞がないかに注意します。

出来れば家具はツッパリポールやストッパーなどを利用し、転倒防止対策をしておきましょう。ガラス部分に飛散防止フィルムを貼るのもおすすめです。

バルコニーは共用部分で、マンション入居者の避難経路として使用します。普段から自分自身や他の入居者の安全を意識して使用しましょう。当然ながら隣のバルコニーとの境にある蹴破り戸付近には、すぐに移動できない物を置いてはいけません。また避難ハッチがある場合には、ハシゴが降りてくる場所に物を置いてはいけません。

②水と食料の備蓄

マンションでは水道のくみ上げは電動ポンプで行われることが多く、停電時にマンション内だけ断水することがあります。人間は食事ができなくても、水だけで数週間生きられますが、水無しでは数日で命を失ってしまいます。1日に必要な水分摂取量は、体重1kgにつき大人は50ml、子供は100ml、幼児は150ml程度が目安となります。

例)大人 体重60kg×50ml=3.0ℓ
  子供 体重30kg×100ml=3.0ℓ
  幼児 体重10kg×150ml=1.5ℓ

最近では味も良く種類もバラエティに富んだ非常食が市販されています。日頃から味に慣れておくために、賞味期限が近づいたものを試食しておくのも良いでしょう。

③携帯トイレを備える

断水してしまった場合もですが、配管の破損状況が不明な場合には排水することが出来ません。一番困るのが、トイレです。災害用の携帯トイレを用意しておくと、自宅のトイレを使用して排泄が可能です。必要な量は1日1人5回トイレを使用すると仮定し、家族の人数分×10日間というように計算してみましょう。

その他在宅避難に必要なものは、燃料としてカセット用コンロボンベ(最低6本)、無洗米、即席麺、レトルトご飯・食品、缶詰、缶パン(長期保存可)、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ウェットティッシュ、使い捨てカイロ、救急箱、ビニール袋など

乳幼児、高齢者、女性がいる場合は、それぞれの過程で必要なものを揃えておきます。

災害用の携帯トイレなどは一度体験しておくと安心です。コロナ禍でお家キャンプなども流行っていますが、非常時には屋内でもテントが有効活用できます。懐中電灯やランタンだけの灯りで一晩過ごしてみるなど、子供も一緒に楽しみながら避難体験をしておくと良いでしょう。また、家族が別々の時に災害が発生することもあります。いざという時の安否確認の方法(災害用伝言ダイヤル)を覚えておきましょう。

管理組合での防災活動

最近は共用部に「防災備蓄倉庫」が設置してあるマンションが増えてきました。どんな備品が準備されているのかを知っておくと当時に、マンション内で防災訓練が実施される時には、出来る限り参加しておきましょう。