住宅ローンの「繰り上げ返済」実は損をしているかも?!

不動産コラム

住宅ローンは長期に渡る借入のため、「多額の借金をしている」という心理的不安を感じる人が多くいます。まとまった資金があれば借入金の元金の一部を内入れし、予定よりも早く完済することが出来るのが「繰り上げ返済」です。金利が上昇傾向にある昨今、将来の返済に不安を感じて急いで繰り上げ返済をしようと考えている人がいるかもしれません。しかし繰り上げ返済にはメリットもあれば、実はデメリットもあります。

繰り上げ返済の仕組み

繰り上げ返済とは、返済期間の途中でに借入れした元本の一部または全部を前倒しで返済することをいいます。繰り上げ返済の方法には2種類あり、ひとつは当初決められていた返済期間が短くなる「期間短縮型」、そして返済期間は変わらずに毎月の返済額が減る「返済金額圧縮型」です。元金を先に支払うことで、将来支払う予定だった金利を削減できることになります。

「期間短縮型」は、最終回の期日を早める、つまり予定よりも住宅ローンを早く完済することが出来ます。一方「返済額圧縮型」は、最終回の期日は変わりませんが、毎月の返済金額を減額できるため返済を楽にすることが出来ます。ちなみに同額を繰り上げ返済した場合の効果としては、「期間短縮型」の方が大きくなります。

繰り上げ返済の手数料

繰り上げ返済は借りている人にとってはお得になる方法ですが、銀行にとっては本来得られる金利をもらい損ねることになります。住宅ローンの場合は繰り上げ返済することにペナルティはありませんが、はやり事務手数料はかかってしまいます。

最近はインターネットバンキングでオンライン手続きをすると、一部繰り上げ返済の場合には「手数料無料」とする銀行が増えてきました。しかし窓口で手続きをした場合には、3,000円~20,000円の事務手数料がかかります。

また、完全にローンを終了させる全額繰り上げ返済の場合は、オンラインで5,000円~50,000円、窓口で10,000円~50,000円の事務手数料がかかります。

繰り上げ返済のデメリット

繰り上げ返済は、ローンを早く終わらせるという面で心理的負担を軽くし、将来かかるはずだった金利を省略できる効果があります。しかし、はやりある程度まとまった資金が必要となります。繰り上げ返済をすることで、手元資金が減ってしまうことが最大のデメリットと言えるでしょう。

・教育資金

・病気やケガの治療費・入院費

・買い物や旅行などのレジャー資金

・住宅のリフォーム資金

・資産運用

・予期せぬ出費

繰り上げ返済をすることで、これらの備えが不足してしまう恐れがあります。特に退職金を利用して繰り上げ返済をしてしまうと、老後資金が大きく減ってしまいますので注意しましょう。

住宅ローン控除期間中は避けよう

住宅ローン控除は、年末のローン残高に応じて所得税の控除を受ける制度です。繰り上げ返済によって元金を減らしてしまうとローン控除額が減ってしまうことがあります。金利負担よりローン控除のメリットが大きいケースが多いので、ローン控除を受けている期間中は繰り上げ返済はしない方がお得です。繰り上げ返済を計画的にしたい場合は、ローン控除が終了したタイミングにしましょう。

見落としがち!団信のメリットが減ってしまう

住宅ローンの期間中には、「団体信用生命保険」がかけられています。万が一の場合には団信の保険料でローンの残高が弁済されますが、繰り上げ返済することで団信のメリットが減ってしまう可能性があります。特に全額繰り上げ返済してしまうと、ローン完済と当時に団信の保障も終了します。定年後に退職金で一括完済してしまった人がガンが発覚し、住宅ローンを継続していれば団信の保険料で代わりに完済できていたのに・・・と後悔しているというケースもあります。退職金が手元に残るのと残らないのでは、その後の生活にも大きく影響します。

ある程度高齢になってから同じ保障の生命保険や医療保険に再加入しようとすると保険料は高額になってしまいますし、そもそもその時の体調や状況によっては加入出来ない場合があります。

住宅ローンには一定の期日が到来するまでの間、債務(例:借金の返済/代金の支払い)を履行しなくてよい利益が存在しています。これを「期限の利益」と呼びます。団信の効力も同じ期間存続しているため、繰り上げ返済のタイミングは慎重に判断した方が良いでしょう。

「借り換え」で返済額を減らす

「返済額圧縮型」を検討している人にとっては、住宅ローンの返済額を減らす方法は繰り上げ返済だけではありません。現在の住宅ローンよりも低金利の住宅ローンに「借り換え」すれば、毎月の返済額を減らすことが可能です。借り換えのする場合もまとまった諸費用が必要となりますが、元本に含めて借入することが可能です。残りの元本が大きい、返済期間がまだ長く残っている、当初の借り入れ金利が高い人は借り替えのメリットが高い人ですので一度検討してみてはいかがでしょうか。

繰り上げ返済は、手元資金によほど余裕がある場合以外は慎重に行いましょう。