住宅ローンの「ミックスローン」とは~リスク分散で金利上昇対策~

不動産コラム

住宅ローンには主に「固定金利型」「変動金利型」「固定期間選択型」の3種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、金利の将来変動を予測するのは難しいため、どれを選ぶか悩む人も多いでしょう。

そうした中で注目されているのが「ミックスローン(またはミックス型ローン)」です。(金融機関によっては「金利選択型」や「金利ミックス型」と呼ばれることもあります。)これは、1つの住宅ローン契約で異なる金利タイプを組み合わせて借り入れる方式です。たとえば、借入金額の50%を固定金利、残りの50%を変動金利で借りるといった形です。超低金利時代で変動金利を選択する人が多いですが、日銀の政策金利が上昇局面に入った現在、「ミックスローン」が注目されています。

ミックスローンの仕組み

では、ミックスローンはどういった仕組みになるのでしょうか。借入金額:4,000万円とした場合で見てみましょう。

A:固定金利:50%(2,000万円)→ 金利1.5%(全期間固定)

B:変動金利:50%(2,000万円)→ 金利0.5%(半年ごと見直し)

4,000万円の半額を固定金利と変動金利の組み合わせで借入れします。

この場合、返済はそれぞれの金利条件に基づいて、別個に計算され、毎月の返済額も合算されて支払います。

※金融機関によっては、各ローンに対して別々に契約を結ぶケースもあります。

具体的に支払金額をシミュレーションすると

【ミックスローンの月々返済額】

固定部分(2,000万円,1.5%,35年):約61,940円

変動部分(2,000万円,0.5%,35年):約50,000円

(※変動部分の金利は将来上昇する可能性があります。)

合計:約111,940円/月 となります。

一方で、4,000万円全額をこれまで通り固定金利のみ、変動金利のみで借入れした場合の返済金額は

【全額固定金利1.5%の場合】

→ 約123,880円/月

【全額変動金利0.5%の場合】

→ 約100,000円/月(ただし金利上昇リスクあり) となります。

ミックスローンのメリット

1. 金利リスクの分散

最大のメリットは、金利上昇・下落のリスクを分散できる点です。すべてを変動金利で組んだ場合、金利が上がると返済額が急増するリスクがあります。一方、全額を固定金利にすると、金利が下がっても恩恵を受けられません。ミックスローンなら、その中間を取れることになります。

2. 精神的な安心感

金利が将来どうなるか分からない不安がある中で、固定部分があることで「最低限この額は変わらない」という安心感が得られます。

3. 返済計画の柔軟性

ライフイベント(出産、子どもの教育、転職など)に備えて、変動金利で低金利メリットを取りつつ、固定金利で安定性を持たせる戦略が立てやすくなります。

ミックスローンのデメリット

1. 手続きが複雑

金利タイプが複数に分かれるため、審査・契約・返済計画が複雑になる傾向があります。場合によってはローン契約書が2つ必要になることもあります。

2. 固定金利部分の金利が高め

固定金利は通常、変動よりも金利が高いため、短期的な返済総額は上がる可能性があります。変動金利が低い分、固定側が重くのしかかることも考えられます。

3. 将来の見直しが難しい

ミックスローンはそれぞれのローンを個別に借り換えることが難しい場合があります。例えば、変動金利部分だけを繰り上げ返済したい、借り換えたい、という時に制限される場合があります。

ミックスローンはどんな人に向いているか

上記を踏まえてミックスローンは以下のような人におすすめです。

1 :金利の先行きを読み切る自信がない人

 →リスクを分散できるため安心です。金利上昇時に支払額の急増を抑 えることができます。

2:共働きで収入が安定しているが、子育てや教育費を見越したい人

 →将来的な出費増を考慮して安定部分を確保したいケース。

3:住宅ローンの返済期間が長め(30年以上)の人

 →長期的に金利上昇の可能性がある場合、固定金利で部分的に備えておくと安心です。

ミックスローンは、金利の不透明な時代における「バランス型戦略」といえます。固定の安心感と変動の低金利メリットを同時に享受できる点が魅力ですが、契約や返済の複雑さには注意が必要です。金融機関にミックスローンの取り扱いがあるかどうか、事務手数料などの諸費用の詳細などを事前に確認しておきましょう。

ミックスローンを希望する場合には、将来の家計の見通しやライフプランに応じて、「どの程度を固定、どの程度を変動にするか」をシミュレーションしながら検討するのが重要です。住宅ローンは長期にわたる契約です。金利だけでなく精神的な安心も含め、総合的に判断して選択しましょう。