ついにマイナス金利解除!住宅ローンはどうなる?

不動産コラム

日銀は3月19日の金融政策決定会合で、ついに「マイナス金利政策の解除」を決定しました。2007年以来、実に17年ぶりに短期の政策金利が上がることになります。とうとう金融緩和策の転換期を迎えるわけですが、私たちの生活の中で影響を受けるものの一つが「住宅ローン」です。すでに住宅ローンを返済中の人、これからマイホームを購入して住宅ローンを借り入れする人はどう対応したらいいのでしょうか。

2023年からの金利の動き

2023年に日銀が2度にわたり金利操作(イールドカーブ・コントロール)政策を修正し、長期金利が上昇したことは記憶に新しいと思います。その結果住宅ローンの固定金利が上昇し、全期間固定金利である「フラット35」はダイレクトに影響を受けました。金利は1年間で約0.3%上昇し、2%目前のあたりで推移しています。この時は変動金利には関係のない修正であったため、「変動金利の上昇は当面ないだろう」とされていました。しかし、今回の「マイナス金利解除」は変動金利の元となる短期金利についての発表です。指標の一つである「無担保コール翌日物」(金融機関同士が今日借りて、明日返すという1日で満期を迎える超短期の資金調達方法)の金利を、これまでの▲0.1%~0%から0%~0.1%程度で推移するよう修正しました。文字通りマイナス金利が終わり、本来の金利に戻った形です。

住宅ローン変動金利への影響は

短期金利に対する政策が変わったということは、住宅ローンの変動金利への影響も十分に考えられます。マイナス金利政策によって2009年からずっと変化せず、ある意味安定していたのは事実です。しかし固定金利に対して変動金利は、本来経済情勢によって動くのが当たり前の金利タイプです。

とはいえ、現在マイホーム購入者の約7割が利用しているのが変動金利です。0.3%~0.5%という低水準で適用されているため、2%手前の固定金利との差は大きく優位であることは否めません。今後変動金利が上昇局面に入ると固定金利との差が縮まり、優位性も低下していくことになるでしょう。

変動金利の見直しは年2回

住宅ローン変動金利の見直しは通常年2回行われることが一般的で、毎年「4月・10月」としている金融機関がほとんどです。

今回のマイナス金利解除が3月中に行われたことで、直近の金利見直しタイミングは4月、つまり来月やってくることになります。現在住宅ローンを返済中の方は「来月から返済額がアップするの?」と心配されるかもしれませんが、ルール上返済額に反映されるのは7月からとなります。もしも今回のマイナス金利解除が4月に入ってから決定されていれば、金利見直しタイミングは半年後の10月となるはずでした。そうした面からも、今回の発表は絶妙のタイミングだったのかもしれません。

返済額が変わらない「5年ルール」

現在変動金利で返済中の人は、ここで金銭消費貸借契約書の裏面を確認してみてください。返済額は5年毎に見直す、いわゆる「5年ルール」が設定されていないでしょうか。この5年ルールがあると、今回のように金利が見直され上昇したとしても返済額そのものは据え置きとなり、次の返済額見直しのタイミングで変更となります。

今から5年後ではなく返済がスタートしてから5年毎というルールなので、次の返済額見直し時期がいつになるのかがポイントです。

金利が上昇したのに返済額が変わらないのは、返済額の内訳つまり元金と利息の内訳が変わるだけだからです。例えば返済額10万円のうちこれまでの内訳が元金8万円+利息2万円だったのが、元金7万円+利息3万円に変更されるというイメージです。一定の返済額の中で金利が上昇すると、元金の減り方が遅くなります。

返済額を上げ過ぎない「1.25倍ルール」

さらに変動金利のルールにはもうひとつ「1.25倍(125%)ルール」が存在します。金利上昇局面で返済額見直しをした結果これまでの返済額を大きく上回ることとなっても、前回の返済額の1.25倍を限度とするルールです。つまりこれまで10万円だった返済額は、上がったとしても12.5万円までということになります。

5年ルールと1.25倍ルールが設定されている変動金利の契約では、急激な金利上昇でローン破綻しないようブレーキがかかります。ただし、あまりにも金利が上昇すると全く元金が減らず、「未払い利息」が発生してしまいます。未払い利息が加わると支払総額が増大する恐れがあり、注意が必要です。

中には5年ルール・1.25倍ルールを設定していない金融機関もあります。詳細は契約書の約款やご自身が契約している金融機関に確認してください。

今後の見通し

現在、住宅ローンを取り扱う金融機関は「金利競争」で横並び感があります。政策が変わったからと言って、すぐに金利を上げると利用者や新規顧客に悪い印象を与えかねません。お互いが様子を見ながら、緩やかに金利を上げていくことになるのではないでしょうか。また、あくまでも店頭金利は据え置き、今後の新規受付から優遇幅を縮小して適用金利を上げる形での対応も予想されます。

今回の決定で変動金利が上昇する可能性が大きく高まってしまいました。返済中の人は家計を見直し、万が一に備える必要があります。これからマイホーム購入を検討する方は、金利が上がった際の返済シミュレーションも行い、借入れをし過ぎないよう慎重に資金計画を立てましょう。